立川談志は怒りの感情をこう「いなし」ていた 落語流アンガーマネジメントのすすめ

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いまでこそタレント議員が当たり前になりましたが、当時落語家が国会議員になろうなんて話は、前代未聞、相当な風当たりだったとのこと。若き日の談志は、そんな世間のやっかみもあり、ある地方で遊説を行った後、とある酔っ払いの通行人にこう絡まれたそうです。

曰(いわ)く「お前なんぞが国会議員になんかなれるわけがない。有権者をバカにしているのか!?」。さてここで、「ふざけんなバカ野郎!」と売り言葉に買い言葉で怒ってしまったら、愚の骨頂です。「そんなすぐ怒るような人になんか投票したくない」と、マイナス評価が高まってしまいますよね。

師匠はこう答えました。

「あなたよりは可能性があります!」

いやはや、見事ですよね。適切に言い返さないと相手はさらに攻撃してくるでしょう。でもあくまでも冷静にこんな一言を返されたら、相手は白旗を揚げざるをえませんよね。

無論、談志が天才だったから当意即妙に答えられたのでしょうが、われわれのような凡人でも後天的な努力で身に付けられそうな気もします。

大事なのは「次にどんなセリフを言ったら、周囲に仲間が増えるだろうか」という目線なのです。「怒り」という感情をむき出しに向かって来る人は、周囲が見えていない状況です。そんな人にムカッとして向かうと、周囲の見えていない人がもう1人増えるだけです。

そうではなく、「あ、向こうは怒って自分に向かって来たな。ほら、周りの人たちが注目し始めたぞ。じゃあ、自分はどんなことを言ったらファンが増えるかな」と、怒りのパワーを変換するように仕向けてみるのです。こんな具合に「俯瞰(ふかん)」する訓練を積めば、たちまちのうちにというわけにはいきませんが次第に談志のようなリアクションが可能になるのではと、確信します。

訓練と言うと大げさですから、日頃からそんなクセを付けてゆくようにしたらいかがでしょうか。

これが落語家流アンガーマネジメント術、もっとずばり言うと「アドリブ力」でもあります。

怒りには“いなし”が有効?

「怒り」というのとはまた違いますが、われわれは落語の最中に鳴らされる「携帯電話」でも日々鍛えられています。

落語に限りませんが、せっかく集中して舞台を見ているときに携帯電話が鳴ったら、台無しとばかりに「怒り」を感じる人は多いでしょう。それは舞台の上にいる落語家の側にとっても複雑な心境ですが、そこで「場を乱された!」とばかりにお客さんを注意でもしようものなら、すべてのお客さんが興ざめしてしまいます。

ここでも「俯瞰」の立場を使います。「落語家対お客さん」という「1対大多数」という間柄を、「落語を愛する、落語家とそのお客さん対携帯電話を鳴らしたお客さん」という構図に何とかして切り替え、「自分の味方を増やす」のです。

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