決定!JR西「新たな長距離列車」のデザイナー 117系を改造し西日本エリアを運行

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新たな長距離列車の改造ベースとなる117系電車(写真:白熊 / PIXTA)

雪月花をデザインする際、川西氏は、JR九州の鉄道デザインで有名な水戸岡鋭治氏から鉄道デザインのあり方を学んだ。ただ、それは単なるデザインのコピーではない。鉄道車両の制約と、ユーザーの快適性をいかに両立させるかという理念である。その結果完成した雪月花は、床材に地元の瓦材を使うなど、オリジナリティあふれる車両となった。雪月花は今年5月、鉄道愛好家団体「鉄道友の会」が優秀な車両に贈る「ローレル賞」を受賞した。

川西氏の元へJR西日本から連絡があったのは、ごく最近のことだという。雪月花の好評ぶりが決め手となったのは間違いないだろう。「瑞風とはまた違った、カジュアルでくつろぎのある列車を目指したい」と意気込みを語る。

利用者目線のデザインに期待

新たな長距離列車をデザインする川西康之氏(撮影:梅谷秀司)

えちごトキめき鉄道では、設立間もない第三セクター鉄道での車両製造だっただけに、川西氏は予算面などでかなり苦労したようだ。今回はJR西日本という巨大会社からの発注。予算は潤沢かと思ったが、「雪月花は新車でしたが、今回は既存車両の改造。制約はいろいろありそうです」。

川西氏がデザインした中村駅は、地元・四万十のヒノキがふんだんに使われている。待合室には勉強机も設置されている。川西氏は地元の高校生がマクドナルドで勉強している姿を見て寂しさを感じた。そのため、列車を待つ間にここで勉強してほしいと考えたのだ。中村駅のデザインに際し、川西氏は以下のように語っていた。「駅の主要な利用者である高校生は、卒業と同時に自動車免許を取得し鉄道を利用しなくなる。地元を離れて都会に旅経つ人もいる。そんな高校生が、数年後に”自分たちはこんなに立派な中村駅で勉強した“と誇りに感じてもらえるような駅にしたかった」

「新たな長距離列車」のイメージ(JR西日本提供)

新たな長距離列車の詳細なデザインに関しては、今後JR西日本と詰めていくという。しかし、ここまで利用者目線に立ってデザインを考える川西氏なら、豪華さとはまた違った満足度の高い列車を造ってくれるに違いない。

11月29日に瑞風と新たな長距離列車をペアで発表し、6月17日の瑞風運行開始からわずか3日後の今回の発表。瑞風とつねに並列的な新たな長距離列車の扱いを見ているだけで、JR西日本の意気込みが伝わってくる。豪華とは別のベクトルで世間を驚かす列車になるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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