公開!「観光列車」の製造費はこう決めている 近鉄が明かしたマーケティング戦略の秘訣

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近鉄の新たな観光列車「青の交響曲」(記者撮影)

豪華な観光列車に乗るための料金は、通常の特急料金にわずか210円プラスするだけ。全区間乗車しても1690円しかかからない。食事込みで何万円もかかるような観光列車が全国各地に増えている中、こんなお得な観光列車を近畿日本鉄道が登場させた。

値段は安いが、高級ホテルを思わせる客室やラウンジは「数万円」級の観光列車を凌駕するほどの出来栄えだ。その観光列車の名は「青の交響曲(シンフォニー)」。近鉄南大阪線・吉野線で9月10日から運行している。

きっかけは「しまかぜ」の大ヒット

近鉄は2013年3月に伊勢志摩と大阪・名古屋を結ぶ観光列車「しまかぜ」(6両編成)を運行開始した。豪華な内装に加え、折からの伊勢志摩観光ブームも相俟って、予約がなかなかとれない人気ぶりに。2014年10月からは京都発着便も追加した。当初2編成の製造費用は研究開発費込みで37億円だったが、追加編成の製作費は14.5億円ですんだ。それでも豪華な装備ゆえに、同社の看板特急「アーバンライナー・ネクスト」の1編成当たり製造費用11.7億円と比べても、まだ割高だ。

青の交響曲の開発構想が持ち上がったのは2013年の夏。しまかぜ運行開始から数カ月が経った頃だ。「しまかぜが大きな反響を呼び、観光列車の吸引力の強さを会社中が実感した」と近鉄観光事業統括部の黒田隆氏が当時を振り返る。

では、どの路線に新たな観光列車を投入するか。吉野は日本一の桜の名所だが、「桜の時期以外にも多くの人に訪れてほしい」(黒田氏)。沿線にはみたらい渓谷、洞川温泉などの観光地もある。新たな観光列車の投入先として、吉野に目が行くのは自然な流れだった。

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