東京の「1日乗車券」、なぜこんなに不便なのか 種類豊富だが「都区内全線」乗れる切符はない

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以前シンガポールの新交通システムについて書いた記事で、同国では環境保護や渋滞解消の観点から乗用車の購入に1000万円以上という多額の出費をハードルとして設け、公共交通利用を推進していることに触れた。チャージ式乗車券もその方針に沿った利用促進のアクションかもしれない。

バンコクの都市鉄道BTS(筆者撮影)

1日乗車券は、パリのように自動券売機で買える都市と、窓口でなければ手に入らない都市がある。タイの首都バンコクの都市鉄道BTSは後者で、自動券売機では通常の切符しか買うことができず、1日乗車券は窓口で購入することになる。

日本を基準とすると海外の駅の券売機や窓口は絶対的に少なく、窓口は長蛇の列が当然という都市も多い。欧米の都市交通ではクレジットカードが使用できる機械が一般的だが、使える紙幣や硬貨が制限されることもある。この点は日本のサービスが最上に思える。ただし海外から訪れた人々にとっては、違う部分が気になるかもしれない。

東京を含めた首都圏在住の方は、多くの場合ICカード乗車券を持っているから、1日乗車券のお世話になることはないだろう。現在はJR西日本のICOCAなども東京で使える。もちろん逆も可能で、筆者も手持ちのPASMOで名古屋や大阪の地下鉄を利用している。

全線に乗れる切符がない東京

しかし同じ都市内で1日に何度も乗り降りするような使い方をするときは、1日乗車券のようなチケットを買ったほうがお得な場合も出てくる。問題はこうした選択肢を持ち合わせていない乗客、つまりICカード乗車券を発行していない地域から訪れる人や外国人旅行者だ。

東京にはさまざまな種類の1日乗車券が用意されている。東京23区内のJR、東京メトロ、都営交通全線で自由に乗り降りができる東京フリーきっぷをはじめ、日をまたいでの利用も可能な東京メトロ24時間券、都営交通なら地下鉄、都電、都バスなどで利用できる都営まるごときっぷのほか、東京に乗り入れる私鉄も独自の乗車券を用意している。

でも、東京23区内のすべての鉄道を自由に使える1日乗車券は存在しない。最も適用範囲が広い東京フリーきっぷでも、東急電鉄や小田急電鉄などには乗れない。外国人観光客の中には自由が丘や下北沢などに足を延ばしたくなる人もいるだろうが、その際には別の乗車券を求めなければならない。

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