円高をモノともしない工場の意外な強み ダイキン流「ええかげん」力


ゆとりがリズムを生み逆に効率を高める

これは「セル+ライン混合生産」と呼ばれる方式だ。セル生産の場合、作業員は作業台で組み立てるのが一般的で、その幅はせいぜい1メートル程度。導線管理の徹底、つまり、作業員をなるべく動かさないためだ。実際、松下電器産業(ルームエアコン国内販売首位)で白物家電を生産する松下ホームアプライアンス社では、幅90センチメートルの作業台を使用し、その範囲内で組み立て作業を行っている。

これに対し、ダイキンの室外機組み立てラインは、作業スペースが幅3・5~3・8メートルもある。しかもその中で、作業員は前後左右に小刻みに動く。ラインに沿って自動搬送機(側板などの大型部品だけを載せた搬送機)が動いているのだが、よく見ると、この搬送機の止まる位置が毎回微妙に異なる。まさに“ええかげん”。そのため、微妙にずれるその停車位置まで、作業員は少しずつ動いて位置を変えなければならない。「この仕掛けにより作業にリズムが生まれ、一層はかどる」と、滋賀製作所の木村茂部長は説明する。

同じ仕掛けは室内機工場にもある。室内機の組み立てラインには、一般的なセル生産で見られる屋台式の作業台が設置されている。ただ、11個の作業台に対し、作業員はわずか5名。目の前の作業が終わると、すぐさま別の台に移動する。

また、室内・外機工場のどのラインにも、ただ周囲の様子をうかがうだけのスタッフがいる。「リリーフ」と呼ばれ、滞っている工程があればすぐにサポートに入れるように、これまた“ええかげん”に配置されている予備人員だ。

滋賀製作所で、一つの工程に要する時間は一人当たりわずか26~30秒。部品の加工から組み立て、梱包までの時間は、室外機が約8時間、室内機が3・4時間とリードタイムは松下と並ぶ業界トップ級だ。「注文があったその日に納入できる」(木村部長)という。

トヨタ生産方式が徹底的にムダを排除することで作業時間や生産リードタイムの短縮を追求するのに対し、ダイキンはあえてムダを残す。それによって作業員のリズムを生み出し、それが引いては効率化につながるという逆の発想で、短納期を実現しているのだ。

また、“ええかげんさ”をあえて残す背景には、変種変量の生産体制が求められるエアコンの特殊性もある。エアコンは各国の電圧や形状の違いなどから機種は無数。特に滋賀製作所では、気候変動による海外特需に迅速に応じるため、海外向け製品を組み立てることもある。そのため、対応する機種の数は450種類(ちなみに、松下電器のエアコン工場は、国内向けのみ生産しているため200機種程度)。トヨタ生産方式でガチガチに管理してしまうよりも、「柔構造」にしておくことで、急な機種変更や特需などに対応できるという側面もあるのだ。

並行して精緻な管理も行われている。滋賀製作所はIT化の徹底により、作業のミス防止や視覚化に努めている。部品パレットにIDカードを組み込み、その情報を基に部品の配膳(ピッキング)や検査装置との交信を行う。室内機組み立て工程の作業手順などもディスプレー化されているため、作業員は複数製品の作業をこなすことができる。

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