原油高が家計を直撃 視界不良の海外旅行、国内は安近短へ回帰
夏休みの海外旅行にブレーキがかかっている。
7月上旬、JTBが発表した今年の夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向見通しによると、海外旅行人数は225万人と前年比7%減の見込み。1990年以降では、SARSが発生した2003年、同時多発テロの影響が残った02年に次ぐ落ち込みだ。
とりわけ中国は36・6%減と、大幅に後退。今年に入り、食品問題などでイメージダウンが続いたうえ、8月8日から始まる北京五輪に絡み、同方面への旅行を手控える動きが広がっている。五輪観戦ツアーも数が限られ、恩恵にあずかる旅行会社はごくわずかとなっている。
もともと「オリンピックの年は海外旅行は苦戦する」(業界関係者)のが通り相場。これに加え、今夏の旅行トレンドは「節約志向」。需要期の夏休みに、旅行業界は厳しい商戦を迫られそうだ。
燃油サーチャージが重し 格安商品に人気が集中
グアム4日間が燃油サーチャージ込みで2万9800円から--。6月末、格安航空券首位のエイチ・アイ・エス(HIS)が関東圏でこんな商品を売り出した。
燃油サーチャージとは、航空会社が燃油価格の一部を乗客から徴収する料金。航空会社によって料金は異なるが、行き先ごとに運賃とは別に一律に徴収される。グアム往復では2万1000円(日本航空の場合)。つまりこの商品の正味の旅行代金は8800円という計算になる。「お客様はわずかの価格差にも敏感に反応するようになった」(宮本秀樹・関東営業販売グループリーダー)。この商品は3分足らずで、1000人の予約でいっぱいになった。
この燃油サーチャージは、海外旅行の重しとなっている。今年に入り、燃油サーチャージは原油高騰に歩を合わせて急速に上昇。たとえばハワイは往復で4万円(日航)が、運賃と別途必要になる。昨夏のハワイ向けが1万7400円だから、倍以上の負担増だ。ハワイに限らず海外旅行の全方面で、昨夏に比べ2倍強まで膨れ上がっている。
サーチャージは子どもも同額かかるため、夏休みの中心顧客となる「ファミリー層の出足が鈍い」(JTB)。好調だったJTB首都圏でも、4~6月の旅行取扱高は前年並みと伸び悩んだ。海外旅行の申し込みは増えたが、出発時にサーチャージが一段と上昇するのを懸念して、キャンセルも同様に増えたという。