いま琴線に触れる「料理をめぐる小説」3選 人気作家・柚木麻子さんが推薦
『夜会服』は、簡単に言うととんでもない姑(社交界の華:滝川夫人)から、ヒロインの絢子が散々マウンティングされまくる話。素敵な料理で鮮やかに戦いを終わらせるのですが、姑をやっつけるのではなく、適度な距離感を見つけて振る舞うのがすごく今っぽい。日本の殺人事件を調べるようになって、日本の家父長制が原因になっていることが多いと感じます。
家の恥をなんとか外に漏れないようにしたいと思ったり、なんとか家族の形を手に入れようと思ったり。失敗が許されないように感じて、適量がわからなくてアワアワして、自信ありげな人にだまされるのが今の時代。自分に合う料理や味、ベストな体型、似合う服やメイク、パートナーがわかるまで、失敗とか見苦しさって避けられない。逆に言うと、“適量”さえわかれば、自由に生きやすい時代です」
“料理教室に今すぐ行きたくなる3冊”
シスターフッド精神にあふれたストーリー
キャスリーン・フリン/村井理子訳 ¥1480/きこ書房
「料理上手=家庭的という考えから自由になれているのがいいなと思います。失敗を恐れず、みんなでどんどん飛び込んでいくとか、結果的に料理上手になれるコツにあふれてる。日本もアメリカと同じように、レトルト食品文化が刷り込まれているのは気をつけたい」
ぶきっちょだからこそ開かれる道もある!
柏葉幸子作/児島なおみ絵 ¥700/偕成社
「松田青子さんの書かれている解説もすごく好きです。料理をはじめぶきっちょな美奈だけど、へたくそな料理を魔界に持っていって、“破れている”“焦げている”とか文句をつけられながら、勇敢にもそのマイナスポイントを生かして成功につなげていくんです」