良作マンガのPRは「コマ画像」の拡散が有効だ

ヒット作でなくても認知される仕組みとは?

公益社団法人全国出版協会によると、2016年の紙と電子を合わせたコミック市場全体の推定販売金額は4454億円。単行本とコミック雑誌を合わせた市場規模は、紙が前年比9.3%減の2963億円で、電子が同27.5%増の1491億円と、紙と比較してやはり電子書籍の成長性が著しい。

2017年3月に福岡で開催された「B Dash Camp 2017 Spring」でピッチアリーナに立つ渡邊氏(筆者撮影)

かつて、紙しかなかった時代は、作品を売り出す「エコシステム」が、美しく機能していた。作者に編集者が並走して作品を生み出し、それを雑誌に連載して売り、単行本化してもまたさらに売れていく。しかし、今は雑誌を毎週決まった日に買って読み、そこから作品を知るという人は圧倒的に減り、潜在的読者に認知される経路は、ソーシャルメディアで紹介されるなど、オンライン上が中心になっている。

「音楽と同じくマンガは趣味性の高いものだから、個人が人に紹介しやすい仕組みをつくってあげることが大事。ある作品の良さを語るときに、テキストで説明することは大変で、マンガはコマ自体を使ったほうが魅力を伝えやすい」(渡邊氏)

モンスター作品と、それ以外の作品の格差

自分の作品を、どこまで、どのような形でプロモーションに活用するか。これは、作家によって考え方が大きく異なる。マンガのフリーミアム戦略で大きなインパクトを残したのは、医療問題を扱った作品『ブラックジャックによろしく』(佐藤秀峰著)のオープンソース化だろう。

作品自体をどのプラットフォームでも無料で読めるだけにとどまらず、タイトルと著者名の表示があれば、営利目的での使用や改変なども事後的報告で認めるという、画期的な手法を使った。結果的に、佐藤氏の作品は多くの人にさらに認知されることになり、『ブラックジャックによろしく』の続編の売り上げに大きく貢献したという。

しかし、渡邊氏は、こうしたやり方を認めつつも、一線を画した考え方のもとに「マンガルー」のサービス開発を進めていきたいと話す。そこには、強者だけしか勝ち残れない世界が出現してしまうことへの、危機感があるようだ。

「全部無料で出してしまうことができるのは、知名度が高かったり、すでにヒット作を出している作家のように、圧倒的な力を持っている人に限られている。誰もがそうした人と同じように、作品のすべてを無料で開放してしまうような手法は取れない」(同)

個人がメディア化して、情報を直接ユーザーに届けられるようになり、もともと強い力を持つ個人のパワーが圧倒的に増幅されていく。口コミで拡散され、プロモーションに予算をかけなくてもヒットしてしまうモンスター作品と、それ以外の作品の格差は広がる一方だ。渡邊氏は、あくまで作品にかかわる人たちそれぞれの権利を守りながら、プロモーションができることが重要だと考えている。

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