東京に「ご当地焼き鳥」が続々と集まる理由 居酒屋不況の中で気を吐くジャンルの新潮流

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予備知識のないご当地グルメがいきなり東京に登場するよりも、なじみやすい。それは、インスタグラムのようなSNSなどにアップした写真を見た人々にも気軽に受け入れられやすいという特徴も有している。

第2に、ご当地焼き鳥が東京に進出する際の下地があったという点。最近、続々とオープンするが、もともと東京にはさまざまなご当地焼き鳥を提供する店舗が存在していた。

豚&みぞダレを用いる埼玉の東松山焼き鳥が東京でも。「ひびき庵」(写真:筆者提供)

たとえば江東区住吉や新宿野村ビルにある「ひびき庵」は、埼玉県東松山市のご当地焼き鳥である、豚を串に刺して、みそダレで味わう「東松山やきとり」が看板商品で、埼玉の高級豚「彩の国 黒豚」の串や「特撰かしら串」などを提供している。また、下北沢の「和楽互尊」に至っては、平成元年の創業ゆえ、もう27年の歴史を誇る。こちらは博多焼き鳥を標榜する店舗。久留米をルーツとする博多焼き鳥は鶏に限らず、串に刺したらなんでも焼き鳥。それを酢じょうゆのかかったキャベツの上に置いていくスタイルだ。

肉ブームが焼き鳥に向かっている

下北沢で福岡焼き鳥の「和楽互尊」。豚串や創作串などが大評判だ(写真:筆者提供)

第3に、昨今の肉ブームが鶏、それも、焼き鳥に向かっているという点。「肉フェス」が開催されたり、肉料理を扱うさまざまな飲食店が紹介されたグルメ本が何種類も出版されたりと、食に関して、いまや肉はひとつの大きなキーワードだ。

しかし、熟成肉ブームが一段落し、牛肉の価格も高騰、それに追随するように豚肉の価格も上昇するなど、仕入れの面からは非常に厳しい時代となった。昨今の健康志向で、脂身の少ない鶏が脚光を浴びたということもある。また、インバウンドを推奨している昨今は、海外からの旅行客も増加し、ハラルフードなどのように、宗教的にもほかの肉類よりも影響の少ない鶏が人気を博している。

そこで昨年あたりから鶏が注目され、中でも焼き鳥は、価格の気軽さや、はしを使用せずとも串のまま手に取れるという手軽さなどが相まって、焼き鳥店が増加中。ワタミの新業態である、昨年7月に開店した「三代目鳥メロ」は、すでに63店舗(5月17日現在)。同じく昨年、すべて280円均一を掲げて三鷹駅北口に1号店をオープンしたモンテローザが運営する「豊後高田どり酒場」も50店舗(同日)だ。

それら3つの要因が追い風となり、各地のご当地焼き鳥が東京に進出しているというわけ。とはいえ、全国には大小合わせて約30のご当地焼き鳥処があるようで、まだまだ東京で知られていないタイプも進出してくる余地は十分にある。

はんつ遠藤 フードジャーナリスト

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はんつえんどう / Hantsu Endo

1966年東京都葛飾区生まれ。東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方を1人でこなし、取材軒数は8000軒を超える。『週刊大衆』「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑 誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』『おうちラーメン かんたんレシピ30』『おうち丼ぶり かんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』(以上、幹書房)など。

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