東急田園都市線「通勤地獄」はいつ解消するか 「チリツモ」作戦でジワジワと混雑緩和を狙う

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「このような小さな施策をコツコツと積み重ねていくことで、混雑率180%を下回りたい」と東急側は説明する。ちりも積もれば山となる。「チリツモ」が東急の選択した戦略だった。

では、混雑緩和対策はもう出尽くしたのか。そんなことはない。2018年春に向け、今のところ2つの方策がある。

1つは、2018年春に田園都市線に導入される新型車両「2020系」だ。会社発表のリリース文には定員に関する記述はないが、車いすやベビーカーの利用者に配慮してフリースペースを全車両に設置することが決まっている。このスペースを活用すれば「1車両につき数人程度は乗車人数を増やせる」と東急側も期待する。

1両につき3人掛けシートを2つ排除する代わりに、仮に乗車人員を6人増やせるとしたら、1編成につき60人。もしラッシュ時の全車両が2020系に置き換われば、混雑率が約4%減る計算だ。

沿線の人口増で混雑解消のハードルは上がる

もう1つは他力本願。小田急電鉄小田原線の複々線化だ。今年度中に複々線化工事が完了し、2018年3月のダイヤ改正は複々線化を踏まえたものとなる。運行本数増、スピードアップ、そして混雑率も新聞・雑誌を楽に読める160%程度まで緩和されるという。

小田急と田園都市線は並行して走っている区間が多く、両者の中間に住んでいる人が、田園都市線の混雑を嫌って小田急に流れる可能性は十分ある。どのくらいの混雑率緩和につながるかはわからないものの、当の東急関係者でさえ、「田園都市線の利用客の一部が小田急に流れてくれれば、混雑解消につながる」と、小田急の複々線化に期待している。

ただ、チリツモ作戦から他力本願まで、あらゆる手を尽くしても、おそらく田園都市線の混雑が解消されることはないだろう。路線としての人気が高く、現在も沿線への人口流入が続いているからだ。

二子玉川ライズの完成で田園都市線沿線の魅力は向上したが…(撮影:大澤誠)

田園都市線の各駅周辺には新築マンションの建設計画が目白押し。南町田駅前のショッピングセンター「グランベリーモール」は今年2月にいったん閉鎖し、再開発で規模を拡大して2019年にオープンする。商業面積が拡大するだけでなく、高層マンションも建設される。2015年に全面開業した二子玉川ライズも連日大にぎわいだ。

東急が沿線の魅力を高めているかぎり、いつまで経っても電車の混雑は解消されない。「魅力ある街」に住む代償が通勤地獄だとしたら、あまりにも皮肉だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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