東急田園都市線「通勤地獄」はいつ解消するか 「チリツモ」作戦でジワジワと混雑緩和を狙う
もう1つのオフピーク移行への取り組みとして、「サテライトシェアオフィス」の利用も促進している。東急は2016年から会員制サテライトオフィス「NewWork」を展開している。朝は駅近くのシェアオフィスで働き、混雑時間が過ぎてから通勤することが可能だ。
ただ、まだスタートしてから1年程度ということもあり、契約企業は39社にとどまる。
田園都市線沿線の直営店舗は二子玉川と渋谷のみ。普及するには契約企業、店舗ともにもっと増やす必要がある。あるいは、サテライトシェアオフィスとは切り離して、遅い時間帯の列車に乗ってゆっくり出社するというキャンペーンを行うのも一案だ。
さらに東急は池尻大橋―渋谷間を含む電車定期券保有者に、朝ラッシュ時間帯に限り、三軒茶屋付近から出発して渋谷方面に向かう東急バスに追加料金なしで乗車できる「バスも!キャンペーン」を行っている。
東京メトロ(東京地下鉄)半蔵門線の表参道や大手町などへ向かう人にとっては、三軒茶屋―渋谷間のみをバスに振り替えるメリットはあまりないかもしれない。しかし、東急バスの大坂上や道玄坂上あたりに勤務先がある人なら、渋谷駅で下車して勤務先に向かうよりも三軒茶屋で下車してバスに乗り換えるほうが便利だ。
バス転換で混雑率は1%緩和
東急によれば、「バスも!キャンペーン」は直近で1日当たり350~450人が利用しているという。1%程度の混雑率緩和につながっている計算だ。キャンペーンを開始した2016年7月当初と比べて利用実績が3~4倍に増えているといい、利用者がまだ増える余地はありそうだが、やはり混雑緩和の決定打にはなりそうにない。
ほかには、乗客の苦痛緩和に役立てたいと、車両ごとの混雑状況をポスターやホームページ上で告知するなど、分散乗車を促す取り組みも行っている。
ポスターを見ると10両編成のうち渋谷方向の前から2両目と最後尾の車両で比較的混雑度の低いことがわかるが、最後尾は女性専用車両。すいていても男性は乗れない。男性にとってこの情報はかえって恨めしいだけだ。
混雑緩和には運行本数を増やすのが特効薬だが、複々線化や渋谷駅のホーム増設といった抜本的な対策を講じないかぎりこれ以上の増発は難しい。川崎市では中長期的な整備事業として溝の口―鷺沼間の複々線化を考えているが、実現の見通しは立っていない。
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