トランプ政権は、オバマ政権時代以前の「戦略的忍耐」に終わりを告げ、「あらゆる選択肢」で北朝鮮強硬策を遂行すると公言している。これは米政府が長らく維持してきた対中国、対北朝鮮戦略の大きな転換である。
1972年の電撃的な「ニクソン訪中」を仕組んだヘンリー・キッシンジャー元国務長官(93歳)は、対中慎重派ないし融和派として、いまだに影響力を持っている。トランプ大統領とはそれほど親しくはないが、長年の中国専門家として尊重せざるを得ない存在だった。
しかし、ここへきてのトランプ政権の対北朝鮮強硬策は、オバマ流を含む歴代大統領の「戦略的忍耐」との決別だけでなく、キッシンジャー流「対中融和路線」とも別れを告げたと言っても過言ではない。
トランプ大統領の本音は北朝鮮にある
2度の米中首脳会談を通じて明らかになったのは、トランプ大統領が一気に外交・安保の表舞台に登場し、その出番を自らはっきりと意識したことだ。シリア攻撃に逡巡し、対中強硬派のスティーブン・バノン首席戦略官・上級顧問を、国家安全保障会議(NSC)からはずしたのは、その何よりの証拠だ。
バノン氏はトランプ大統領を陰で操る黒幕とメディアでは報じられてきた。本欄では、バノン氏を利用しているのはトランプ大統領自身であり、バノン氏はホワイトハウスの中でそれほどの影響力のある存在ではないと、すでに指摘してきたが、まさにそのとおりとなった。
バノン氏は、トランプ氏の娘婿であるジャレット・クシュナー上級顧問とのそりが合わないとも報じられている。そうかもしれないが、トランプ大統領はクシュナー氏をテロの危険があるイラクに派遣するとか、使える人物を使える時に使うという点では徹底している。
今回のシリア攻撃やアフガンへの爆弾投下にしても、いずれも北朝鮮へのメッセージであり、同時に中国へのメッセージでもある。中国としっかり手を組むことによって、中国にやるべきことはやってもらう。はっきりしてきたのは、トランプ大統領の本音は北朝鮮にあるということだ。
このほど韓国と日本を訪れたマイク・ペンス米副大統領も、トランプ大統領の本音を代弁している。ペンス氏は、北朝鮮に対して米大統領の力と決意を試すべきではないと警告し、北朝鮮の挑発に対して、圧倒的、効果的な反撃を行うと強くけん制している。
日本の安倍晋三首相がトランプ大統領の方針を支持していることは言うまでもない。ペンス氏との会談でも「平和的解決」に力点をおきつつ、米国の強い姿勢と外交圧力によって、北朝鮮の核やミサイルを完全に放棄させることで合意している。
日本と米国の同盟関係は、きわめて強固なものになっているといえるだろう。
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