「ミニシアター」はもう過去の古い文化なのか トレインスポッティング続編と映画界の20年

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しかし、今は後続の作品がつかえているため、集客の状況が芳しくなければ、早々にプログラムは打ち切ってしまう。口コミで徐々に客層を広げ、ロングランヒットを記録するような息の長い作品はなかなか生まれにくい状況となっている。

その一方で、シネコンはスクリーン数が多く、早い段階で初日を確定できるメリットがあるという。

「シネコンはスクリーン数が多いので、ある程度の上映期間が取れるということが大きい。そして配給会社側が初日を設定しやすいということがあります。ミニシアターの場合、3カ月程前でも『4月公開』とアバウトな情報しか出せませんでしたが、シネコンの場合は『4月8日』と決めて打てるのが強み。そうすればそこから逆算して宣伝も打てる」(浅見エグゼクティブディレクター)

上映館数を絞り、シネコンでのロングラン狙う

​右からユエン・ブレムナー、ユアン・マクレガー、ジョニー・リー・ミラー。21年前は無名だった出演者は銀幕のスターに成長 (写真:配給会社提供) 

前作がミニシアター系で大ヒットした作品でもあり、本来ならば前作を上映したミニシアターで上映したいところだが、ビジネス的なことを考えると、難しい面もあるようだ。

その一方で、できるかぎり長く上映できるような工夫もしている。今回は全国86スクリーンでの展開となるが、長く上映してもらうために、あえて上映館数を絞っているという。

「たとえば半径5キロのエリアの中に4カ所のシネコンがあったとしても、すべてのシネコンでやる映画ではないと思うんです。その場合は、そのうちの1館で上映するようにしている。また、都市部を中心に展開はしていますが、若干、都市部から離れたところでも上映します。20年前に前作をご覧になった方の中には、ちょうどお子さんをもたれて、郊外に家を持たれている方もいる。そうやって考えていくと全国で90弱の規模での公開ということになるんです」(浅見エグゼクティブディレクター)。

20年という歳月は決して短くはない。『トレインスポッティング』に主演した当時は無名だったユアン・マクレガーも、いまや『スター・ウォーズ』にも出演するハリウッドのトップスターの1人だし、ダニー・ボイル監督は『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカー監督の仲間入りを果たしている。

同様に、ミニシアターを取り巻く環境もこの20年で大きく変わっている。本作がミニシアターからシネコンへと主戦場を変えたのは象徴的であるともいえる。それでもスクリーンに映る4人は、20年経っても、いつまでも大人になれないダメ男のままでホッとする。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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