ヤマト、未払い残業190億円で利益半減の驚愕 値上げや荷受け抑制の「クロネコ改革」道半ば

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残業代の未払い問題が表面化する中、3月の春闘で会社と組合が妥結したのは、年間の総労働時間を1人当たり2448時間と、2017年3月期(2016年3月16日~2017年3月15日)の2456時間を超えないことだった。

さらに今年6月以降には「時間帯お届けサービス」で12~14時の指定を廃止し、宅配ドライバーの昼の休憩時間をとりやすくする。また配達が集中しやすい夜間枠は20~21時から、19時~21時へ広げ、受付締め切り時間も20時から19時に繰り上げることで、終業後の宅配ドライバーの作業軽減を図る。

労働環境を改善すれば、宅配ドライバー1人当たりの配達個数は減少する。とはいえ、ECの伸びは続いており、宅配ドライバーの採用が厳しい中では、さばききれない荷物が発生しかねない。サービスを維持するため、外部の配達業者に委託する部分は増えそうだ。

外部委託はこれまで12月など繁忙期に限られていたが、昨年からは平常時でも外部に委託せざるを得ない事態が頻発している。委託費は荷物1つ当たりで支払われることが多く、利益の圧迫要因になっている。

宅配ロッカーの設置を急ぐが…

目下、ヤマト運輸が躍起になって広げているのが、宅配ロッカーの設置だ。宅配ドライバーが直接届けられるのは8時から21時までだが、ロッカーはそれ以外の時間でも受け取れるため、一人暮らしや共働き世帯のニーズは高い。再配達の抑制にもつながるため、会社側の期待は大きい。

駅など宅配ロッカーの設置を加速させている(写真:パックシティジャパン)

フランスで宅配ロッカー事業を運営するネオポスト社と、合弁で設立した関係会社パックシティジャパンを通じて、2016年からロッカーの設置を進めている。

当初の目標は2022年までに5000カ所以上の宅配ロッカーの設置だっが、2018年3月までに、2000以上を設置する方針へ切り替えた。

ただ、実際の設置には時間がかかっており、今年3月末時点では240台にとどまる。利用も会員組織「クロネコメンバーズ」の登録者に限られており、現時点での効果は限定的と言わざるを得ない。

また、受け入れ荷物の総量抑制などを順次進めるほか、採算改善へ今秋をメドに宅配便料金の全面値上げを検討している。だが、交渉には時間を要するうえ、外部委託費などコスト構造の改革が思惑通りに進められるかは不透明だ。

18日の下方修正の会見で、報道陣から値上げや働き方改革について問い詰められた芝崎専務執行役員は、「詳細は28日の本決算でお話しします」と連呼し、明言を避けた。

はたしてヤマトHDは今後の業績改善策をどう示すのか。28日の決算発表に注目が集まる。

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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