ユナイテッド航空の「惨劇」はなぜ起きたのか 「個人指名の搭乗拒否」は米国では当たり前

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国際線ではファースト、ビジネス、プレミアムエコノミー、エコノミーといった複数のクラスがある。オーバーブッキングになってもクラスのアップグレードなどで対応できるため、他便への振り替えは少ない。ただ国内線は飛行機が小型になり、乗れなくなる客が実際に出てくる。

米運輸省によれば、このような意思に反する搭乗拒否者の数は2016年、米国国内線で4万人超だった。単純計算で1日当たり約111人である。最も多かったのはLCC(格安航空会社)のパイオニア、サウスウエスト航空。次にアメリカン、そしてユナイテッドが続く。これは運航規模と比例するため、1万人当たりの割合で見ると、最も多かったのはユナイテッドが契約する地域航空会社のエクスプレスジェット航空だった。

日本の航空会社は客の意思を尊重

一方、JALやANAなど日本の航空会社は「乗客の意思に反する搭乗拒否」はしない方針だ。指名するための優先順位付けなどについて、国が定める規定もない。「オーバーブッキング時には早めにお客様から協力者を募り、粘り強くお願いしている」(ANA広報)。

国内航空会社の多くは、他便への振り替えに応じてくれた乗客には、振り替え便の日時が当日の場合は協力金として1万円(マイルで希望する人には7500マイル)、翌日以降の場合は協力金2万円(同1万5000マイル)と宿泊費などを支払う。

国土交通省が公表している国内線でのオーバーブッキングの状況を見ると、最新の2016年4~9月では、ANAが不足座席数で最も多い。一方、1万人当たりの割合ではスターフライヤーが最多となった。

オーバーブッキングは航空業界の商習慣ともいえる。

JALやANAは自社のウェブサイトで「予約を持っていてもさまざまな都合により空港に来られない乗客もいる。空席になってしまうと想定される座席を、実際に利用を希望する乗客に提供するため、一部の便で座席定数よりも多くの予約を受けている」と説明している。できるだけ空席を避けたい航空会社側の事情もあるとみられる。

米国議会では航空会社がオーバーブッキングをしにくくするよう法整備を求める声が出始めている。ユナイテッドは今回の事件における乗務員の対応、振り替え便に応じる協力客への補償金制度、オーバーブッキングへの対応、空港当局との連携の仕方などについて「徹底した調査」を行い、4月30日までに結果を公表する予定だ。

真実がわかっても、ユナイテッドが失った信用は戻ってこない。事業への影響も避けがたい状況だ。乱気流はしばらく止みそうもない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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