中国鉄道メーカー、海外不振で成長ストップ 世界最大の中国中車、シンガポールで欠陥も

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中国中車の巨大な売上高を支えているのは中国大陸の鉄道需要だ。2016年における同社の地域別売り上げは中国国内が9割にのぼる。

中国は過去10年間で巨額の鉄道投資を行ってきた。昨年発表した第13次5カ年計画(2016~2020年)でも、国内の高速鉄道の総延長を1万9000キロメートルから3万キロメートルに延ばし、80%以上の大都市をカバーするという計画を打ち出した。

2016年こそ前期比3%の減収となったが、この5年間の鉄道向け投資の総額は3兆5000億元(56兆円)。その何割かは鉄道車両の建設に充てられる。計画通り進めば、国内事業はしばらくは高水準を維持できそうだ。

ただいずれ国内事業の成長は鈍化に向かうことが予想され、将来の成長エンジンとして外国展開を急ぐ必要がある。そもそも南車と北車という2社が統合したのは、単一ブランドにすることで政府と一体となり外国展開を推進するためだった。

統合の結果、2015年の外国向け売上高は前期比66%増の264億元(4225億円)に急拡大した。売上高全体に占める割合も11%に達している。

だが、2016年の同売上高は189億元(3030億円)に急落。前年度から3割近く減ってしまった。減収の理由については「外国案件の納入タイミングがずれたため」と、同社は説明する。この説明どおりなら、2017年度は外国売り上げが回復することになる。

外国展開を急拡大しているが・・・

世界各国へ高速鉄道が売りこめるかが、業績改善のカギになる(写真:digifab / PIXTA)

同社は外国向け案件の受注額が81億ドル(8991億円)に達したとアピールしている。

またインド北部のハリヤナ州で現地企業との合弁で鉄道車両整備工場が操業開始。英国やドイツでは現地機材メーカーを買収するなど、海外展開の加速に躍起だ。

米国では、マサチューセッツ州スプリングフィールドに工場を建設中で、2018年からボストン地下鉄向けに284両を生産予定。昨年3月にはシカゴ地下鉄向けに846両を受注した。シカゴに組み立て工場を建設し、2020年から納入する。先月にはロサンゼルス地下鉄向けに64両を製造することも決まった。

とはいえ、日本の大手車両メーカー・日本車輌製造でさえ、米国における現地生産では苦戦している。中国メーカーが一朝一夕で事業を拡大できるかは不透明だ。

外国案件では不手際もあった。昨年7月、シンガポール地下鉄に納入した鉄道車両35両中26両で欠陥が見つかり、修理のためシンガポールから中国中車に送り返されたのだ。

果たして中国中車はもくろみどおり事を進めることができるか。外国売り上げの落ち込みが一過性で来期以降、再び成長基調に戻るのか、あるいは停滞が始まるのか。今年1年の動向を注視する必要がある。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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