自民・公明の連立に「すきま風」が吹きすさぶ 「錨(いかり)」が「怒り」に変わる時が来るのか
そうした中、3月27日の2017年度予算成立を受け、自民党は「テロ等準備罪(共謀罪)」法案の会期内成立を確実にするため、衆院での同法案の4月6日審議入りに公明党の協力を求めたが、同党は昨秋の臨時国会で継続審議となった民法、刑法両改正案などの先行審議が「国会の慣例だ」(国対幹部)として難色を示した。
あらためて二階氏が井上義久公明党幹事長と協議する一方、水面下の調整を続けた結果、4月3日に(1)6日に衆院で審議入りする、(2)衆院法務委員会での審議は民法改正案を先議し、そのあとに共謀罪法案を審議する、ことで妥協した。ただ、同法案を審議する衆参の法務委員会は定例日が衆院週2日、参院週3日で衆参で定例日重複もあることに加え、野党の激しい抵抗も考えると、与党が「強行突破」でもしないかぎり6月18日の会期末までの成立は困難、との見方も少なくない。
「共謀罪」は国会で過去3度も廃案となった「いわくつきの法案」(民進党幹部)でもある。公明党は表向き「今国会成立を目指す」(国対幹部)としているが、「与党で強引に成立させれば都議選への悪影響が出る」というのが公明党の本音とみられる。東京五輪でのテロ対策強化を大義名分に「不退転の決意」で今国会成立を目指す首相や二階氏にとって、これも「公明の裏切り」(自民幹部)と映る。
2トップの相性も悪い、公明は理詰め
さらに、首相らがいらだちを強めている「森友学園疑惑」でも両党の"諍(いさか)い"が表面化した。3月23日に衆参両院予算委で行われた同学園の籠池泰典理事長(3月末で退任)の証人喚問での証言内容について、首相側近の西村康稔総裁特別補佐らが籠池氏の偽証罪での告発を検討する考えを明らかにしたが、公明党の大口善徳国対委員長がすぐさま「衆参の予算委で決めることだ」と不快感を示した。公明党は「偽証罪告発は議会に与えられた権能で、政党が口出しするのは間違い」(幹部)という筋論で牽制した格好だ。
「自公連立」は野党時代も含めて18年目に入っている。これまでもたびたび軋轢が生じてきたが、「与党であることが最優先の公明党と、選挙で同党の固定票に頼る自民党との利害の一致」(自民長老)が連立維持の"生命線"となってきた。公明党の山口代表も「風雪に耐えて幾多の困難を乗り越えてきた」と繰り返す。
ただ、両党首脳らの個人的関係については、党首の首相と山口氏、幹事長の二階氏と井上氏というツートップがいずれも「肌合いが違い、相性が悪い」(自民幹部)とみられている。政権運営で「権謀術数」を駆使する首相や二階氏に対し、山口、井上両氏は理詰めで物事を考える「生真面目な性格」とされるからだ。井上氏は、二階氏の前任で「人柄のよさ」が際立っていた谷垣禎一前幹事長を「チャリラ―(自転車好き)仲間」として慕っているが、二階氏に対しては共謀罪をめぐる昼食会談を「30分程度」で切り上げるなどよそよそしさが目立つ。
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