三越伊勢丹、トップ交代で明示された「進路」

杉江次期社長「私は構造改革を優先する」

一方で、杉江氏の発言からは大西社長との違いもみられた。その一つが経営課題に対する優先順位だ。杉江氏は「大西社長は第一に成長投資を進めて、そのうえで構造改革を実施するという考え。私は構造改革を優先し、その成果を原資にして成長分野に投資したい」と率直に語る。

数ある構造改革案の中で、杉江氏が言及したのが人件費の削減だ。2008年の統合以降、三越伊勢丹では2011~2012年にかけて大規模な人員削減を行ったが、それ以降も人件費は増加傾向にある。理由の一つが新規事業のために人員を増やしたということ。もう一つが旧三越社員と旧伊勢丹社員との賞与格差を埋めるべく、毎年、旧三越社員の賞与を上げて旧伊勢丹社員との差を縮めてきた点だ。

杉江氏は「人件費の削減は(百貨店の)トップラインが上がっていない中で必要な事項」と明言したうえで、「どう進めるかは労働組合や各事業部門長と話して決めたい」と話した。

3月20日には赤字続きだった三越千葉店と三越多摩センター店が閉店する。この店舗以外で「現時点において店を閉める議論はしていない」(杉江氏)としながらも、現在の百貨店モデルで生き残るのは厳しいとの認識を示し、店舗ごとにテナントに場所を貸して賃料収入を得る割合を高めることなどを検討していく。

会社全体の事業構成についても、同業の高島屋やJ.フロント リテイリングが不動産事業を収益柱に育成した事例を挙げながら、自社の優良不動産を活用する方針だ。ただ目標数値や詳細な構造改革案の公表は、いずれも2016年度決算が発表される5月に先送りされた。

大西社長時代の三越伊勢丹の課題について、杉江氏は「社内でのコミュニケーションが不足していた」と振り返る。2016年11月に開かれた決算会見では、苦戦する地方・郊外店についての改善策を問われた大西社長が、伊勢丹松戸店、伊勢丹府中店、広島三越、松山三越の4店を具体的に挙げ、百貨店部分の縮小やテナント誘致など抜本策を講ずる考えを明らかにした。

大西氏は社内調整を軽視していた

任期途中で社長辞任が決まった大西洋氏(撮影:今井康一)

実はこの4店の改革については社内で機関決定された話ではなかった。それだけに名前が挙がった店舗の従業員は困惑したとされる。杉江氏は「(大西社長が)対外的にアグレッシブな発言をしていたが、内部向けには対話が不足していた」と指摘したうえで、「役員間、または役員と従業員、個人的には中間のマネジメント層との対話を重視する」と語った。

大西社長の辞任について、杉江氏は2018年度に営業利益500億円という目標達成を断念し、2020年度に先送りしたことの責任を取ったと説明した。とはいえ、この説明を額面通り受け取って納得した記者は皆無といっていいだろう。

今回の辞任劇では報道が先行する中で株価も下落するなど混乱を招いた。大西社長は自ら会見に出席し、辞任理由と杉江氏を後任に据えた理由を説明すべきだったのではないか。

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