Jリーグ1000試合の日程、40分で決まるワケ

試合日程を決めるのは鉄鋼会社の技術だった

さらに天皇杯優勝クラブとJリーグ上位3クラブが重複している場合、4位のクラブが繰り上がってACLに出場できるので、ACL開催期間中リーグカップ戦の日程から外さなければならないクラブが、天皇杯が終了しないと確定しない。

こういった諸条件を考慮したうえでの日程決定の作業が、いかに途方もないものかは想像に難くない。

Jリーグの開幕は毎年2月下旬。スタジアムとの調整や、各クラブのチケット販売、スポンサー営業などを考慮すると、できるだけ早くクラブ側に日程を提示する必要がある。

この途方もない作業は、Jリーグ発足から10年ほどは、手作業で2~3週間かかっていたそうだが、2004年にIBM傘下の仏アイログ社製のシステムを導入。これが初代「日程くん」である。これで日程1案を作成するために必要な時間は1日に短縮され、J1、J2、リーグカップ戦全試合の対戦カードを生成するのに1週間ほどでクラブ側に提示できるようになった。

組み合わせ最適化技術でさらに高速化

鉄鋼製品の生産、加工、輸送まで膨大な要素がある。新日鉄住金系のシステム子会社である新日鉄住金ソリューションズはこうした組み合わせ最適化問題にノウハウを持つ(撮影:編集部)

その日程くんの処理速度が画期的に上がったのは、デビューから10年後の2014年。このシーズンからJ3が加わり、作業量が増加する中で、日程1案をJ1で最短3分、クラブの多いJ2でも40~60分で作成できるソフトを提供したのが、新日鉄住金のシステム子会社・新日鉄住金ソリューションズである。

従来比で約24倍の高速化が実現したことで、天皇杯後の約5日間でJ1からJ3まですべての対戦カードを出せるようになった。その基になった技術が、鉄製品の生産計画立案に必要不可欠な「組み合わせ最適化技術」だ。

製鉄会社は鉄鉱石などの原料を高炉で溶かし、圧延して作った鉄の板を、顧客のオーダーに応じて切り出し、丸めたり曲げたりくっつけたりして製品を作り、完成した製品は船に積んで輸送する。布から服を作るのに、効率よく型紙を配置すれば、端切れは最小限度にとどめられるが、鉄板を切り出す際にも同じことがいえる。

完成品を船に積む際にも、荷を下ろす順番や、船を安全に航行する上で、重さの異なる荷を船腹のどこにどう配置するのかを考えなければならない。

材料の歩留まりや配送効率、燃料効率などの向上といった経営課題を解決するために、製鉄会社が蓄積したノウハウが、組み合わせ最適化技術である。昔は現場のスタッフの経験とカンに頼っていたが、1980年代以降システム化が進んだ。

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