過熱する排出権争奪戦−−温暖化ガス削減ビジネスの実態


 総じて、日本勢の儲けは限られたものだといっていい。トップの三菱商事でさえ参加CDMプロジェクトで排出権が発行されたのは900万トン強。排出権価格は契約時期によってさまざまだが、初期の契約は1500円前後だったようだ。全量を三菱商事が扱ったとして140億円弱。マージン率は不明だが、2割としても30億円。99年から人材を張り付け、直近では40人が世界中を飛び回っている。

手続きに必要な事務作業は自社だけで追いつかず外注にも出している。トータルの経費を考えれば、現時点での利益はブレークイーブンといった程度で、各社も状況は大きく違わない。三菱UFJ証券も成功報酬の排出権はまだほとんど発行されていない。日本企業や日本政府関連のコンサルや調査で経費を賄っている程度だという。将来への成長期待と大口需要家からの供給要請が各社を駆り立てているのが現実だ。

京都議定書の義務履行のため、日本企業の排出権取得ニーズが高まるのは、ほぼ確実な情勢だ。だが、ここでも日本勢が大儲けするのは難しい。それは、規模の大きい、開発を手掛ける業者から見て効率が高い案件が少なくなっているためだ。

たとえば、フロンは二酸化炭素よりも温暖効果が高いため、フロンを破壊するCDM事業は同じ量の二酸化炭素を処理するのに対して6500倍から2万3900倍で効果を換算することができる。それゆえ、大型案件になりやすい。これまで国連で登録された中で排出量削減の予定額が最大の世界銀行ファンド(世銀PCF)のプロジェクトも、二番目に大きい三菱商事と新日鉄のプロジェクトもフロン案件だ。

しかし、CDM事業のために新規でフロン関連施設を建設する動きが出たことで、02年以降に稼働したフロン事業は原則CDMに認められなくなった。大量に排出権が得られるフロン案件はほぼ払底。フロンの中で温暖化係数が1万1700倍と高いHFC類の件数は06年の7件、07年の6件。08年に入ってからは1件しか国連で承認されていない。

風力発電や水力発電、ランドフィルガス(廃棄物の埋め立てから出るガス)の処理といった小粒な案件は少なくないため、当面、そこを小まめに拾うのが日本勢の仕事だ。

日本に排出権の取引所ができたとしても、プレーヤーとして日本企業がどれだけ存在感を示せるかはまったく未知数。他人がつくった土俵で割に合わない仕事を強いられているというのが、排出権市場での日本企業の位置づけのようだ。

(週刊東洋経済編集部)

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