ニセ情報で健康被害、サイト運営者の責任は 塩水を飲みダイエット主張「塩水洗浄」の危険

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「虚偽情報が不特定多数に流布される中で、信じた人が健康等に被害を生じることは十分あり得ることで、信じたがゆえに、被害が生じれば、因果関係も肯定されるからです。虚偽情報の流布について故意、過失が存在すれば、不法行為責任の要件はそろうことになります」

犯罪になる可能性はないのか。

「特に健康上の被害が生じた場合、刑法上の傷害罪(死亡した場合は傷害致死罪)、業務上(重)過失致死傷罪が成立することも考えられます。傷害(致死)罪については、暴行に基づくものが一般ですが、暴行に基づかない形態の傷害(致死)罪という形態もあるとされています(例えば嫌がらせ電話をかけるなど)。

ですから、不特定多数へ向けて人の健康を害するような虚偽情報を発信することも傷害行為と評価される可能性があります」

サイト運営者の責任は?

今回の「塩水洗浄」は、まとめサイトなどに掲載されているケースもあったが、情報発信者だけでなく、こういったサイトの運営者には何らかの責任は生じないのだろうか。

「まず、民事上はいわゆるプロバイダ責任制限法で、免責の対象になるかどうかがポイントになります。現行の解釈では、免責が問題になるものは、『情報の流通による権利侵害』で、これは、情報の流通そのものによって権利侵害が生じる場合です。

ですから、名誉毀損、プライバシー侵害、著作権、商標権のうちの一部は含まれますが、健康被害は、情報が受信者に到達した後に被害が発生するため、プロバイダ責任制限法の免責の対象にはならないと考えられます」

免責の対象にならないということは、運営者も何らかの責任が問われる可能性があるのか。

「運営者が掲載情報を具体的に把握していない場合は故意、過失を認定しにくいでしょう。責任を問いにくいということです。

ただ、掲載情報の存在を知りながら放置した場合は不法行為責任が生じ得ます。刑事責任についても、掲載情報を具体的に把握していなければ問うのは難しい一方、具体的に把握しつつ放置すれば、実態に即して傷害(致死)罪や業務上過失致死傷罪が成立し得ると思います。

安易な情報発信が思いがけない深刻な法的責任へ結びつくことがあり得ることを認識する必要があると思います」

落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:泉岳寺前法律事務所 

 

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