日本の大学教育が機能不全を起こす根本原因 単なる「卒業厳格化」だけでは何も解決しない
これに対して日本はどうだろう。文部科学省の統計では、2007年は78.1%の学生が規定学期数で卒業、2012年の中退率は2.65%となっている。大学に入学した8割弱の学生が、所定修業期間に卒業しているのだ。そう考えると、「卒業しやすい環境」であることは間違いない。逆にドイツは、「卒業しづらい環境」といえる。取得単位数を考えても、立教大学ドイツ文学専攻の場合、卒業要件は124単位だったが、入学したドイツの大学は180単位となっていた。それだけでも、卒業のハードルが高くなる。
ドイツの学生生活はシビアなものだ
ドイツの大学での授業の様子も紹介しておこう。筆者が所属していた学部は、ひとつのモジュールに対し、講義とゼミナールがセットになっていた。たとえば「EUの政治の仕組み」というモジュールなら、月曜日の講義で「EU議会」について学び、水曜日のゼミで「EU議会の問題点」について話し合う。ゼミでは、学生がプレゼンテーションをして、それに対し議論する。
授業にある程度慣れたらバイトをしようと思っていたのだが、すぐにそれは甘い考えだったと気づいた。言葉の問題ももちろんあるが、とにかくやることが多いのだ。ゼミは週3回あったが、議論に参加するために、毎回大量の資料を読み込んでいかなくてはいけない。講義も、テスト前にまとめるには量が多すぎるので、つねにある程度理解している状態を維持しなくてはいけない。グループワークやプレゼン、学期内リポートなどで、頭はつねにパンク一歩手前の状態だった。
単位の取り方も、日本とは違う。日本では、講義とテストやリポートがセットになっているのが主流だ。だがドイツでは、履修登録とテストの登録は別で、テストを受けたい学期に別途申し込む必要がある。ドイツには、同じ必修の授業を3回落とすと学籍を失うという、厳しいルールがある。たとえば、経済学部の必修である「簿記」を3回落としたら、経済学部の学籍を失い、2度とドイツ国内で経済学部に入学することはできない。そのため、学生の多くは、テスト1カ月前からアルバイトやクラブ活動を休み、さながらセンター試験直前の受験生のような「勉強モード」に入る。
また、テストの多くは、記述式だ。知識の量を測るというよりは、理解度を測る問題が並んでいる。口頭試験もあり、「州と国の役割は、ドイツ基本法でどのように定められているか」というような質問に、その場で答えなくてはいけない。期末リポートは10~15ページの分量が必要で、しっかりと出典を明記しなくてはいけない。出典のミスがあった場合、内容がよくとも落第する可能性が高い。
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