子どもの「お弁当作り」で消耗する必要はない フランスは遠足弁当でも「パンとハムで十分」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただ、フランス人の子どもたちにこんな“手の込んだ”お弁当を持ってきている人はいなかったようだ。子どもによると、彼らはバゲットにハムを挟んだりした、簡単なサンドイッチを持ってきたという。お弁当箱のような容器には入っておらず、アルミホイルにくるまれていた。日本の遠足の持ち物リストにはたいてい「敷物とおしぼり」が入っているが、フランスの幼稚園からそんな指示はなかった。お弁当は、芝生の上に座ったりして食べたようだ。「水を持参」という指示はあったが、水筒ではなく、みんなペットボトル入りの水を持ってきたという。

つまり、フランスでは、遠足のような特別な日ですら、手の込んだお弁当は作らなくていいのだ。自宅にある材料でサンドイッチを作れば、それで十分。なんだか、力が抜けた。

そして、子どもが小学生にもなれば、もっと簡素になる。私の子どもが小学生のとき、遠足の付き添いをする機会があった。昼食の時間になり、芝生の上に座った子どもたちがリュックからお弁当を取り出す。出てきたのは、バゲット、パック入りのハム、チーズ、ポテトチップ、みかんなどだ。子どもたちは、自分でバゲットにハムを挟んだりして食べる。幼稚園時代と違って、アルミホイルに包んだサンドイッチを持ってくる子どもは少ない。小学生になれば、自分でサンドイッチを作るのが普通なのだろう。

つまり、フランス人には見栄えのいいお弁当を作ろうという発想はないのだ。しかも、子どもたちが「ほかの子はどんなお弁当を持ってきているだろうか」などと気にしている様子はまるでない。ひたすら自分の食事に集中している。そもそも、周囲を見回したところで、みんな同じようなお弁当なのだ。

昼食を終えた子どもたちは、明るい日差しが降り注ぐなか、鬼ごっこのような遊びを始めた。にこにこ笑って、走り回っている。午前中かなり歩いたのに、元気だ。簡単なお弁当だからといって、校舎を離れて過ごす遠足が楽しいことには変わりがないのだ、としみじみ感じた。

共働きが増加する日本。お弁当を簡素化できないか

『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(上の書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

フランス人の目に、容器の中に色とりどりのおかずが詰まった日本のお弁当はどう映るのだろうか。知人のフランス人女性は、「栄養のバランスが取れていていいと思うし、うらやましい。でも、作るのにはかなり時間がかかるでしょう」と言う。知人によると、フランス人が「ピクニック(お弁当)」にとって重要と考えるのは、「シンプルであることと食べやすいこと」だそうだ。

共働きをしている知人の母親に、日本のようなお弁当を作ってもらいたいと思うか尋ねてみても「作るのが大変だと思うから、そんなに手間のかかったピクニックは必要ないです」という返事だった。

女性就業率82.7%(OECD調べ、2015年)と働く女性の多いフランスでは、出勤前に手の込んだお弁当を用意するのは、家庭にとって負担だろう。サンドイッチの材料を持たせるだけならば、買い物も楽なうえ、準備にほとんど時間がかからない。子どもが帰宅した後も、お弁当箱やスプーンやフォークも洗わなくていい。フランスのお弁当は、合理的で作り手のストレスが少ないのだ。

日本も共働き家庭が増え、女性が子育てしながら働くことは普通になりつつある。仕事に加え、家事、育児といくつもの役目をこなさなくてはならない。せめて、お弁当はもう少し簡略化できないものだろうか。    

国末 則子 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

くにすえ のりこ / Noriko Kunisue

フリーライター。東洋経済新報社、朝日新聞記者を経てフリーライターになる。2001~2004年、2007~2010年の2度にわたってパリに滞在し、2人の子どもを現地校に通わせた。著書に『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(プレジデント社)。
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事