「こつこつ」という日本語が突き付ける現実 今の自分の行動が未来を切り開く

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私は、「こつこつ」には、現実に目覚めさせる作用もあるのではないかと思うのです。「こつこつ」を英訳する場合、「to construct the foundation」(基礎を構築すること)や「to make one's eyes opened to the realities of life」(現実に目覚めさせること)とも表現できるのではないかと思うのです。

仏教における「こつこつ」

実は、仏教にも「こつこつ」と同じ意味を持つ言葉があります。それは、「懸命に努力する」という意味では「精進」(しょうじん)です。よく、「今後も精進いたします」という文句を耳にすることがあると思いますが、これは日常生活でいうところの「頑張ります」ということを意味するのです。

しかし、「こつこつ」を深く捉えた「現実に目覚めさせる」という意味では、別の仏教用語が当てはまります。それは、「而今(じこん)」というものです。これは「今の一瞬」を意味し、過去や未来にとらわれることなく、ただ今を精一杯に生きることの大切さを説く言葉です。

「幽霊」という言葉は、多くの方がご存知だと思います。この「幽霊」から連想される一般的なイメージが、長い髪(おどろ髪)が後ろになびき、だらんとした手を下にぶら下げ、足がなく宙に浮いているというものではないでしょうか。実はこの三つの特徴にはすべて意味があるのです。

まず、長い髪が後ろになびいているのは、過ぎてしまった過去に執着していることを意味し、だらんとした手を下にぶら下げているのは、未だ来るか来ないかわからない未来に余計な心配をし、取り越し苦労していることを意味しています。そして、足がなく宙に浮いているのは、現実に目を向けず、「今」という時間を大切に生きていないことを意味しているのです。このような三つの特徴を持つものを「幽霊」と呼ぶのです。自分自身を振り返ったとき、はたしてどれだけの人が脱「幽霊」の状態で生活しているでしょうか。

「こつこつ」とは、今を生きること、今するべきことに集中することの大切さを教えてくれる仏教精神を帯びている言葉なのかもしれません。

結果的には、今の自分の行動が未来を切り開くのです。私自身も改めて、今後も未来は自分で築くものであることを忘れずに、日々「こつこつ」と努力を重ねながら生活していきたいと思います。

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大來 尚順 浄土真宗本願寺派僧侶

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おおぎ しょうじゅん / Shoujun Oogi

1982年、山口県生まれ。浄土真宗本願寺派僧侶でありながら、通訳や翻訳も手掛ける。龍谷大学卒業後に単身渡米。カリフォルニア州バークレーのGraduate Theological Union/Institute of Buddhist Studies(米国仏教大学院)に進学し修士課程を修了。その後、同国ハーバード大学神学部研究員を経て帰国。帰国後は東京と山口県の自坊(超勝寺)を行き来しながら、僧侶として以外にも通訳・翻訳、執筆・講演などの活動を通じて、国内外への仏教伝道活動を実施。翻訳著書も多数出版する傍ら、初級英語で仏教用語をやさしく解説した「英語でブッダ」(扶桑社)も非常に好評のほか、「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系列)にも出演。
 

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