メーカーと著作権団体にミゾ ダビング10決着 残る対立の“火種”
地上デジタル放送のコピー制限回数を現行の1回から10回に緩和する「ダビング10」の運用が7月4日から始まる。当初の予定から1カ月遅れたものの、関係者が目指していた北京五輪までの開始は実現した。だが、遅延の原因となった家電メーカーと音楽・映像著作権団体の対立は深まるばかりだ。
円満解決に程遠い 省庁間合意の決着
ダビング10の開始に当たっては、総務相の諮問機関である情報通信審議会で、メーカーや著作権者、放送関係者を交えた議論が行われてきた。一方、並行して開かれていた文部科学相の諮問機関(文化審議会)で、私的録音録画補償金制度(補償金制度)をめぐって、メーカーと著作権団体の議論が紛糾。これがダビング10開始にも影響を及ぼした。
争点の同制度は、補償金が一部のAV機器や記録媒体の販売価格に含まれ、音楽・映像のコピーによる損失を補う目的から、著作権者へ一定額が払われる仕組み。最大の対立点は、ダビング10に対応するハードディスク(HDD)内蔵型録画機器に対する補償金制度での扱いだった。5月初旬、HDD内蔵型を補償金対象とする文化審議会案に対し、メーカー側が強く反発したところ、著作権団体も「補償金は創作者への対価の還元で、ダビング10導入の前提」と主張。これが飛び火する格好で情通審議会でも両者が対立し、6月上旬予定のダビング10の運用開始は棚上げとなってしまった。
膠着状態が続くともみられる中、打開策として6月17日に経済産業省と文部科学省から省庁間合意が公表される。その内容は、メーカー側の反発が少ないブルーレイ・ディスク(BD)とその録画再生機器を現行制度の対象に加え、対立解消を図ろうとするもの。肝心の「HDD内蔵型」は外されたものの、結局は著作権団体側が譲歩する形で、ダビング10開始にメドがついた。
だが、運用開始決定後の24日、著作権団体の記者会見で、実演家著作隣接権センター運営委員の椎名和夫氏は「家電メーカーは役所を通し、著作権者に圧力をかけた」と批判。著作権団体側は今回の省庁間合意が、メーカー側の意向を酌んだ動きと見ており、大きなわだかまりを残したともいえる。