マツダの悩みは「トランプリスク」より深刻だ 屋台骨の米国と日本で販売がつまづいた理由
トランプリスクに加え、マツダの経営陣が頭を悩ますのは日米の販売低迷だ。むしろ足元ではこちらのほうが深刻な課題といえる。
今回の決算発表でマツダは2016年度通期の営業利益見通しを従来予想から200億円引き下げ、1300億円とした。前期比では4割を超す減益となる。ドル円レートが当初の想定よりも円安に振れたことで180億円の押し上げ効果があるが、日米の販売減少の影響が打ち消してしまう。さらに、リコール(回収・無償修理)など一過性の品質関連費用が200億円の悪化要因となっている。
値引きに頼らない販売が限界に
当初、米国販売は通期で32.5万台を見込んでいたが、セダンタイプの苦戦で1.5万台引き下げた。主力の小型セダン「マツダ3(日本名:アクセラ)」は第3四半期まで(2016年4~12月)で前年同期比9%減。中型セダン「マツダ6(日本名:アテンザ)」は同15%減だった。
ガソリン安や低金利を背景に、需要がセダンからSUV(スポーツ多目的車)やピックアップトラックなどの大型車に移ったためだが、他メーカーよりもセダンの苦戦が目立つ。原因はメーカーが販売店に対して値引きの原資として支給するインセンティブ(販売奨励金)にあった。
営業部門を統括する青山裕大執行役員は「競合他社が強化しているインセンティブに必ずしもタイムリーについていっていなかった」と分析し、今後はインセンティブを一定程度積み増す考えだ。
マツダは極力値引きをしない「正価販売」を販売改革の軸に据えており、米国でもインセンティブ競争からは距離を置いている。米国では、マツダの車づくりの哲学を販売員が顧客に伝え、商品価値を理解してもらう取り組みを昨年から始めている。価格以外の価値を訴求できれば、消費者のロイヤリティ(忠誠心)が高まり、再購入に繋がりやすい。結果としてマツダも販売会社も収益基盤が安定する、という良循環につなげるのが狙いだ。
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