民主党は、代表選を通じて政権奪取を加速せよ

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民主党は、代表選を通じて政権奪取を加速せよ

民主党参議院議員 藤末健三

昨年の参議院選挙で、民主党は参議院で第一党に躍進した。しかし、この選挙結果は、「自民党に対する不信任」であって「民主党に対する信任には至っていない」と言うべきものだ。つまり、「年金改革」ができない与党に、有権者が「NO」と言ったにすぎず、民主党に「YES」と言ったわけではないのである。

民主党に必要なこと

では、民主党になにが必要か?
 
 それは、政党としての明確な日本の在り方、つまりビジョンを示すことだ。そのためにも民主党代表選を行うべきである。民主党にとっての代表選は、単に党のトップを選ぶというだけではなく、「政権が取れる政党確立」への最大の好機だ。

代表選には、三つの意義がある。すなわち、

ひとつは、徹底したオープンな政策議論と投票により、党の政治理念を統一する機会
 ふたつには、国民へ民主党をPRする機会
 三つ目には、次の世代を担う優秀な若手を表に出す機会
 
 筆者は、とくにふたつ目の項目が重要と考えている。代表選は、民主党の政策やビジョンを明確にし、そしてそれを一般有権者に伝える最高のチャンスとなりうるからだ。

イギリス労働党の経験

筆者は、2年前にロンドンに行き、政権奪取を経験した労働党国会議員からどのように政権を取ったかを聞く機会があった。もっとも印象に残ったのは、ブレア前首相を代表に選出する代表選挙において、労働党は、地方をめぐり公開でテレビを入れて候補者による政策討論を行なったという。マスコミの目を引いて話題を作り、労働組合のための党というイメージを「改革の党」に変えことに成功したとのことだった。

民主党も同じ手法を採るべきだ。昨年4月の代表選(国会議員だけの投票)でも小沢・菅という二大有力候補者が出ることにより、マスコミの注目を大きく集め、同月に行われた衆議院議員千葉補欠選挙の勝利につながった。
 
 いまこそ、代表選を大々的に地方も巻き込み行うことで、次の衆議院総選挙に向けて大きな勢いをつけるべきだろう。

次の首相を決める代表選に

そして代表選は、次の首相を選ぶ選挙であるとの位置づけを明確に示さなければならない。自民党は総裁選挙をしないで首相をまた変えようとしている。民主党が代表選挙を行うことによって、自民党が首相を内部事情で選ばれていることを明確するとともに、民主党は首相候補をきちんと選挙で選んでいることを示すべきである。

筆者は、政権を獲得するためには、「無党派層」をどう取り込むかがカギと考える。世論調査の分析などからすると民主党は、中間層に強く、その支持層をより所得が低い層に広げていく必要がある。

現在、小泉路線の自由競争主義により、所得格差や地域間格差は拡大しつつあり、民主党は「格差是正による共生」という大きな対立軸を打ち出すべきだ。とくに、ブレア時代の労働党のように「公平な教育」をまず打ち出すべきである。

小沢代表の正当性を確立するための代表選

また、次の首相となる可能性が高い民主党の代表の正当性を明確にするためにも、代表選は重要な意味を持つ。代表選を行えば、必ず小沢一郎代表が勝つ。それも圧勝すれば、「小沢代表の意思=民主党の意思」ということを明確できるのである。

こうすることによって、特定個人の意見を党外で発言するようなことを完全に止めることができる。一部の個人の意見がマスコミで報じられ、それをもって民主党は一枚岩でないと言われる今の状況は、民主党にとって大きなマイナスとなっている。こうした状況をなくす最大の手段が代表選挙なのだ。

政権交代で健全な民主主義を

現在、先進国の中で政権交代が行われていない国はわが国だけだ。
 
 政権交代がなければ、民意を政治に反映できず、また、政官の癒着が生じ民主主義が機能しない。民主党は、日本に健全な二大政党制を根づかせるため、「政権が担える政党」になる責任がある。
 
 そのためには、「明確な政策理念」を打ち立て、格差社会、増え続ける財政赤字、不安定化する国際情勢への対応など大きな変化へ対応するための明確な政策の選択肢を有権者に示すことが求められている。

見えてきた二大政党制

前回05年の総選挙では、自民党は、300議席近くを獲得した。これは民主党の100議席強の3倍近い議席数だ。議席数だけを見れば、民主党の大敗だが、獲得票数を見ると自民党は民主党の1.3倍を獲得しているに過ぎない。最も差がついたのが、これまでの選挙には参加しなかった若年層である。この層の投票率は、その前の約3割から約5割にまで上昇した。この新たに選挙に行った若年層の票差がそのまま自民党と民主党の差になっており、民主党がこの層を把握できれば議席を逆転することは可能性だ。
 
 この年9月に迫った代表選は、政権交代の可能性を秘めたこれまでとはまったく異なる環境で行われる。この代表選挙をどう行うかは、民主党の再生、ひいては日本に二大政党制が根付くかどうかを左右することになる。

(撮影:梅谷秀司)

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