教育困難校では「風呂の入り方」も教えている 学力以前に生活スキルがない生徒も存在

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日本人であれば、湯船に入る前に体を洗うといった基本的な作法は、親から教わるものだと思うが、それを知らないのだ。まして、大きな浴場に入るときに他人に迷惑をかけないようにする作法は、まったくわからない。幼少期から家庭の小さな浴室、あるいはアパートの共同浴室だけを利用し、家族で旅行をしたり、日帰り入浴施設を利用するといった体験がないのだろう。

このような生徒たちには、入浴方法の事前指導をしないと、体を洗わずに湯船に飛び込んだり、テレビ番組の影響か、全身をバスタオルで包んで入ったりする。そして、彼らの入った後には湯船や浴室が非常に汚れ、あまりのひどさに見かねた教員が湯船に浮かんだごみを掃除するはめになるのだ。

もちろん、林間学校や修学旅行など、宿泊を伴う学校行事も小学校段階からあるにはある。しかし、「教育困難校」に通う生徒には小、中学校での不登校経験者が相当数おり、彼らは当然それらに参加していない。また、このような学校行事には費用がかかる。

学校行事に参加させるおカネがない

近年は、生活保護世帯や生活困窮の度合いがそれに準じる世帯には、就学援助制度で自治体が費用負担することにはなっている。しかし、この制度を知らない場合や、保護者ががむしゃらに働き、なんとか公的サポートの対象外となるぎりぎりの収入がある場合などは、これらの学校行事に参加しないことも多い。表向きの費用以外の小遣いや着替えの衣服代を捻出することが難しいからだ。

そのため、自分でバイトができる高校生になって初めて、修学旅行に参加するという生徒も少なくない。それでも、どうしても費用が工面できず参加できない生徒も必ずいる。だからこそ、社会人となる前の最後の機会として、修学旅行の際に、教員は必死に入浴方法を生徒に教えようとする。

日頃の学校生活でも、生活の常識を教えなければならない場面はいくらでもある。食器の並べ方、食べ残しの始末の仕方、ごみの分別、場所による掃除のやり方、服装の整え方等々を、教員だけでなく、事務職員、業務主事、外部委託している食堂の従業員、出入りする業者など多くの人々が見るに見かねて教えてくれている。

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