ついに公式戦復帰のウッズ、輝きは戻るのか 復帰大会選びに見る「勝利」へのこだわり

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「自分に最適なボールを見つけることが何よりも大事」。そう語ったウッズは、ヒーロー・ワールド・チャレンジ終了後の12月半ばにブリヂストンとボール契約を結び、「このボールに合うクラブを探していきたい」と、まずボールありきの姿勢を示した。

とはいえ、いずれはクラブ契約も結ぶはず。ファーマーズ・インシュアランス・オープンでは、果たしてどんなウッドとアイアンをバッグに入れるのか。そこにゴルフ業界の大きな興味と関心が集まっている。

ウッズの当面のスケジュールも、すでに明らかになっている。ファーマーズ・インシュアランス・オープン出場後は、すぐさま翌週、欧州ツアーのオメガ・ドバイ・デザート・クラシックに出場。それから1週おいて、米ツアーのジェネシス・オープンに出場し、さらに翌週はホンダクラシックに出場する予定になっている。

高密度のスケジュールから読み取れる自信

2連戦、そして再び2連戦という積極的な4試合の出場予定を組んでいることから考えて、現在のウッズは、心技体すべての状態が極めて良い、少なくとも悪い要素はないと考えていいだろう。

ファーマーズ・インシュアランス・オープンの舞台、トーリーパインズが得意コースであるのに対し、ジェネシス・オープンの舞台であるリビエラは、ウッズが生まれて初めてプレーした米ツアーの会場という所縁はあるものの、ウッズにとっては数少ない"不得意コース"だ。

1992年、16歳のアマチュアで出場したときは、同大会はニッサン・ロサンゼルス・オープンと呼ばれており、ウッズ少年は予選落ちとなった。翌年もアマチュアとして出場したが、結果はまたしても予選落ち。

プロ転向後は1998年と1999年にいずれも2位に甘んじ、以後も勝てそうで勝てないという意味で“ウッズの不得意コース”といわれてきた。そして、2006年の2日目に74をたたいて棄権してからは、ウッズは同大会からずっと遠ざかってきた。

それなのに、10年の歳月を経た今年、なぜ突然出場するのかといえば、ウッズが立ち上げた新ブランド、TGRライブが同大会のマネジメントを務めるため、ウッズは大会ホスト的な立場でリビエラに出向くことになったというわけだ。

長い戦線離脱を経て復帰する41歳のウッズは、若かりし日のウッズとは心技体すべてが変わっている。

1999年は年間8勝、2000年は年間9勝、2001年からは3年連続で年間5勝。黄金時代のウッズは「勝つためだけにプレーする」という言葉を地で行く強さだった。

そんな王者に陰りが見え始めたのは、2009年の暮れの交通事故が発端となった前代未聞の不倫騒動。以後、長期欠場、スイング改造、成績不振、そして故障。メジャー優勝から遠ざかったウッズは、世界最強のウッズではなくなり、気がつけば、世界ランキングは3ケタへ後退。若者たちの時代の中で、勝利より戦線復帰を目指すウッズになっている。

しかし、そんなウッズだからこそ、もしかしたら、得意コースで新たなる戦い方を見せてくれるかもしれない。かつての不得意コースが得意コースに変わることもあるかもしれない。さまざまな変化を経て1年5カ月ぶりに米ツアーに戻ってくる新生ウッズに、寄せられる期待は膨らむばかりだ。

舩越 園子 在米ゴルフジャーナリスト

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ふなこし そのこ / Sonoko Funakoshi

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年にフリーライターとして独立。93年渡米。在米ゴルフジャーナリストとして新聞、雑誌、ウエブサイト等への執筆に加え、講演やテレビ、ラジオにも活動の範囲を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。アトランタ、フロリダ、ニューヨークを経て、現在はロサンゼルス在住。
 

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