将棋連盟、谷川会長が辞任会見で語ったこと わずか15分の会見で見えた「トップの器」

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日本将棋連盟は、久保利明九段や渡辺明竜王の話を基に、三浦九段を出場停止処分にした。竜王戦の挑戦者に決まっていた三浦九段は挑戦権を失った。竜王戦が終わった後に第三者委員会の報告書がまとまると、そこには驚くべき結論が書いてあった。疑惑の端緒となった三浦九段の「30分の離席」はそもそも存在しないし、三浦九段や家族のパソコン、携帯端末を調べても、対局中に将棋ソフトを参照した履歴は出てこなかった。

昨年12月末、三浦九段の不正疑惑に関する報告内容を公表する谷川会長。その時は「処分自体は適正だった」と語っていた(撮影:今井康一)

将棋ソフトは今やトッププロに匹敵するところまで進化している。こうした不正疑惑が誰かに生じるのは火を見るより明らかだった。それなのに、金属探知機を設置するなどして対局場に通信端末を持ち込まないなどの対応が「後手に回った」ことの責任を取って辞任するのだと谷川会長は語った。

新会長は「知名度のある方に」

新しい会長は臨時の棋士総会を経て選ばれる。総会開催の日時は19日の理事会で決める。総会で選ばれた理事が協議して新会長を決める。それまでは谷川会長が続投する。

新会長に相応しい人物像を問われ、谷川会長は「新会長は知名度のある方が相応しいのではないか」と述べた。

将棋ファン、棋戦の協賛会社、三浦九段への誠意を示すために辞任すると言いながら、辞任を決めた一番の理由が「心身ともに不調」では、三浦九段をはじめとした多くの棋士は納得しないにちがいない。会見は会長の体調不良を理由にわずか15分、質疑応答はたったの5分だった。谷川会長が説明責任を果たしたとは、誰も思わなかったのではないか。

一連の不祥事で明らかになったのは、谷川会長は人の上に立つ者には向いていなかったということだ。ポストが人を作るということがままあるが、谷川会長においてはそういうことは起きなかったということである。
 

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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