個人投資家には「持たざるリスク」なんてない 「乗り遅れてしまった」と焦っている人たちへ
ところが個人は他の人がどうであれ、関係ありません。自分が儲かるかどうかだけです。つまり機関投資家が相対比較であるのに対して、個人の場合は絶対損益が重要なのです。
したがって、上昇相場に乗り遅れたら様子を見て買わなければいいだけの話です。むしろ乗り遅れまいとあせって買うと、往々にして高値づかみをすることになってしまいます。ですから個人投資家にとっては「持たざるリスク」を考える必要はなく、もう買えないと思ったら、「休むも相場」という格言にしたがってじっとしていればいいのです。
上昇相場では「ハーディング現象」に陥りやすい
ところが、多くの場合、相場が上昇し始めると多くの人は乗り遅れまいと焦って買いに出ることになります。これはなぜそうなるのでしょう?
行動経済学で「ハーディング現象」というのがあります。これは「群れの心理」ともいうべきもので、みんなと同じ行動をしないと不安に陥る心理をいいます。この場合、本来であれば投資の判断はあくまでも自分ですべきことであるにもかかわらず、ついまわりの人の行動に同調してしまいがちになるということです。
「持たざるリスク」という言葉に煽られると、“みんなが買うから自分も買わなければ!”というあせりの気持ちに陥ることから、他と同じく買いに走るという行動をとりがちです。でも株式投資においては、みんなと同じ行動をとっていたのではダメで、むしろ逆の行動をとらなければ儲けることはできません。
とは言え、みんなと逆のことをやるのは非常に難しいことで、強い意志を持っていなければ実行するのは困難です。であれば、むしろ何もしないで様子を見ているだけでもいいのではないかと思います。
どんな状況でも常に株式で運用し続けなければならないプロの運用者と違って、個人投資家は常に「フルインベストメントの状態」にしておく必要は全くありません。世の中には株式や投資信託などを自分のおカネで投資したことがないという人はたくさんいます。そういう人たちは“持たざるリスクを負っている”のでしょうか?持たざるリスクというのはあくまでも運用をしている人たちの間での相対比較において言えることです。個人投資家はそれぞれ自分の運用スタイルがあるのですから、無理して投資し続けなければならない理由はなにもありません。
むしろ現金を常に一定の比率で持っておき、株価が大きく下がった時に買えるようにしておいた方が結果として得られる利益は大きくなるはずです。株式市場は永遠に上がり続けることもなければ永遠に下がり続けることもありません。たまたま上昇相場に乗り遅れてもどこかで必ず下がりますから、次に大きく下がった時を待てばいいのです。あせる必要は全くありません。
私は「持たざるリスク」という言葉を聞くたびに、駅のホームのアナウンスを思い出します。「発車間際の駆け込み乗車は大変危険ですからお止めください。次の列車をお待ちください」(笑)。乗り遅れても次の列車は必ずやってきますから、勢いよく飛び乗らなくても次を待てばいいのです。2017年の相場もすぐに「始発列車」が出発しますが、焦って飛び乗った方がいいかどうかは、年末年始の間にじっくりと考えてみてはいかがでしょうか。