スマホの「GPS」で従業員監視は許されるか 会社は従業員のサボり対策に使えるが…
そして、会社が従業員の行動を管理・把握すること、そのために必要な措置を講じることは、監督権限(それに加え、業務命令権限)の行使として認められるといえるでしょう。
プライバシー侵害とされた裁判例も
しかし、会社が従業員の行動を管理・把握することは、事業活動を円滑・効率的に遂行するためという目的において認められるものです。
その目的から外れたものや、目的達成のために必要かつ相当といえる手段・方法を超えるようなものは、会社に認められた権限を超え、従業員の権利・利益を不当に侵害するものといえます。
GPS機能を利用した行動管理についてみた場合、その目的が「当日の突発的な案件などの業務を割り振るため」「サボり行為の監視」ということであれば、事業活動遂行という目的にそくしており、また、手段としても必要かつ相当といえ、法的な問題はないと思われます。
また、GPS機能アプリを従業員の私有スマートフォンにダウンロードするよう指示することも、従業員にとって過大な負担とまでは言い難く、許される範囲といえるでしょう。
もっとも、事業活動に必要なリソースは原則として会社が負担すべきことからすれば、GPS機能アプリをダウンロードしたスマートフォンを会社が支給するほうが望ましいでしょう。
しかし、GPS機能による行動管理が、終業時間以降や、休日などの業務時間外にまで及ぶときには、事業活動遂行のためという目的から外れており、従業員のプライバシーを侵害するものとして違法とされる可能性があると思います。
最後に、参考になる東京地裁の裁判例(平成24年5月31日判決)を紹介しておきます。
これは、GPS機能付き携帯電話で位置を常時確認することができるというシステムを用いて従業員の勤務状況確認をしていたケースで、裁判所は次のような理由でプライバシー侵害を認めました。
『労務提供が義務付けられる勤務時間帯及びその前後の時間帯において、被告が本件ナビシステムを使用して原告の勤務状況を確認することが違法であるということはできない。反面、早朝、深夜、休日、退職後のように、従業員に労務提供義務がない時間帯、期間において本件ナビシステムを利用して原告の居場所確認をすることは、特段の必要性のない限り、許されない』
弁護士ドットコムの関連記事
迷惑駐車に激怒、ミニバイクの鍵穴に「ガム」入れたらトラブルに…法的責任は?
中高年夫婦「セックスレス」12年間で倍増「女性がNO!と言えるようになってきた」
20年会っていない父の「葬儀費用100万円」を求められた! 負担する義務はある?
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら