「完全養殖クロマグロ」増加で何が変わるのか 近畿大学の成功に続き、水産会社も本格出荷

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日本水産の大規模沖合養殖システム(写真:日本水産)

完全養殖のクロマグロが、より身近になる日が近づいている。2002年に近畿大学がクロマグロの完全養殖に初めて成功、2004年に初出荷してから10年超が経ち、マルハニチロや日本水産など水産大手もここにきて本格出荷への体制を整えつつあるからだ。

水産庁によると、2014年の漁業・養殖による生産量は約1.7億トン。うち、養殖は約7300万トンを占める。日本人の1人当たり水産物消費量は27.3キロ(2014年)と、この数年は微減傾向にあるが、消費額ベースで見ると4万6454円(2015年)と漸増傾向が続いている。その理由について、「水産物価格が上昇傾向で購入量は減少しているが、消費者の購買意欲自体が低下しているわけではない」と水産庁は説明する。

資源減少への対抗策

外国人観光客の増加で魚介類を豊富に使う日本食人気が高まる中、マグロなど主要魚類への人気と需要が高まっているのは事実だ。一方で、水産資源の国際的な管理は強化されている。水産各社は種の保全と同時に生産量をいかに増やすかという課題を突き付けられ、その解決策の一つとして養殖事業の強化に取り組んでいる。

現状では大手水産会社の養殖事業の規模はまだ大きくはない。マグロだけではなく、歴史があるカツオやブリ、サケといった他の魚類を含めても、養殖事業はまだ採算がよいとはいえないからだ。現在、国内では94経営体、160漁場でマグロの養殖が行われており、クロマグロは2015年に22万6000尾が出荷された。うち、卵のふ化から種苗を生産する人工種苗による生産(完全養殖)は約2万尾程度だ。

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