【産業天気図・家電・AV】材料・為替高に北京五輪特需も盛り上がり不足、08年度は「曇り」
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
2008年度の家電・AV業界は、前半・後半とも「曇り」となりそうだ。米国景気の減速、材料・円高に加え、期待の北京五輪特需も四川大地震の影響などで盛り上がり感にかける。特にここ数年業績低迷が続いていた中堅メーカーにとっては厳しい期となる見通しで、天気予想は前回の「曇りに近い晴れ」から若干悪化すると見込んでいる。
企業別にみると、ソニー<6758>は09年3月期営業益2割増を見込んでいるが、利益押し上げの中身は投資が先行したゲーム機の黒字化や、赤字のリアプロテレビからの撤退効果が大きい。パソコン、デジタルカメラなどは出荷台数増だが為替影響で利益は横ばい程度と慎重にみている。為替はドルが100円、ユーロが158円の想定だ。今期は液晶テレビ「ブラビア」の低価格モデルを北米・新興国に投入するが、北米の消費市場は厳しい状況が続く。現地の量販チェーンの中には電子機器の販売好調とする企業もあるが、総体では「個人消費は一段と低迷している」(米連邦準備理事会=FRBの6月上旬の報告)とみるのが正しいだろう。この景気環境の中、低価格であっても消費意欲をどれだけ喚起できるかは不透明だ。
松下電器産業<6752>も営業益13%増を見込むが、原料・部材の価格高騰と調達難を不確定なマイナス要因とみている。特に07年度に厳しい調達難に陥った液晶パネルについては、「多少緩和されるが、厳しい状況に大きな変わりはない」(大坪文雄社長)との見方。民間調査の推計では今期薄型テレビの市場価格は2割程度下落するとされ、調達難による部材価格高が進めば、最終メーカーの利幅が圧迫される。
中堅メーカーにとって厳しい要素となるのは、ソニー、東芝<6502>といった大手メーカーが国内外市場で、出荷規模を生かした価格攻勢を仕掛けていることだ。液晶テレビを手がける日本ビクター<6792>は今09年3月期、国内出荷を大幅に絞りつつ米国市場での本格販売を期するが、首位企業群の主戦場である米国でどこまで伸長できるかは不透明だ。パイオニア<6773>も今期は従来のプラズマテレビ集中戦略を改め、シャープ<6753>からパネルの供給を受けて液晶テレビを発売するが、製品の独自性がどこまで訴求できるかは未知数だ。業界アナリストの間には、今期は中堅メーカーの合従連衡や事業見直しもあり得るとの声もある。
【杉本 りうこ記者】
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