【産業天気図・半導体】DRAM価格底入れで事業環境は改善し「曇り」へ、ただ業績本格回復はまだ先
08年4~9月 | 08年10月~09年3月 |
従来は「雨」としていた半導体業界の2008年度前半の天気を今回は「曇り」へ変更する。理由はDRAM価格が期初である4月から上昇へ転じているからだ。ただし、半導体企業の業績回復はまだ先になりそうで、08年度後半の天気は従来どおり「曇り」のままとする。
米国マイクロソフトの基本ソフトウエア「ウィンドウズ・ビスタ」発売によるパソコン需要拡大期待と、北京五輪特需による薄型テレビなどデジタル家電の需要拡大期待とが相まって引き起こされたのが今回の半導体の供給過剰局面。それも、ようやく最悪期を脱したものの、折からのサブプライムローン問題による米国市場の先行き不安もあり、在庫調整の進捗は緩慢となっているのだ。
そうした事業環境下、日本唯一のDRAM(励振動作が必要な随時書き込み読み出し可能な記憶回路)製造企業であるエルピーダメモリ<6665>では、「07年初からの販売価格低下は4月で止まった」(同社)と判断。同社は業績見通しを開示していないが、「東洋経済オンライン」としては、今09年3月期は売上高を前期比19.1%増の4830億円と予想している。ただし、減価償却と研究開発の費用増のため営業赤字は前期実績249億円から今期予想280億円と赤字幅拡大を見込み、来10年3月期の営業黒字化を予想している。なおエルピーダメモリは6月11日、独キマンダとのDRAM共同開発の技術提携に関し正式契約を結んだことを発表したが、これは10年までに販売開始を計画している最小線幅40ナノメートル世代以降という、将来に向けた提携である。
一方、日本勢では半導体首位の東芝<6502>が原子力発電とともにNAND型フラッシュメモリ(記憶容量の大きい一括書き換え可能な不揮発性記憶回路)への「戦略的集中投資」を継続中だ。
いまや富士通<6702>が3月21日付で半導体事業を全額出資子会社の富士通マイクロエレクトロニクスへ分離、沖電気工業<6703>が10月1日付で半導体事業をOKIセミコンダクタへ分離したうえで株式の95%をローム<6963>へ売却することが決定している。つまり、現在の東芝は、本体で半導体事業を併営する唯一の大手日本勢となっているのだ。
東芝の半導体事業の将来を展望するうえで、こうした事業体制は大きな意味をもつ。東芝のNAND型フラッシュメモリの販売価格は前08年3月期に「50%超の下落」(同社)を喫し、今09年3月期も「40%から50%の下落を見込んでいる」(同)。それでもひるまず二工場同時建設のような積極投資路線をひた走れるのも、まさに企業体力の大きい本体が併営する事業体制のなせるわざ、といえる。
しかも東芝はこうした本体での半導体事業併営という体制を続ける。というのも、収益が不安定な半導体事業と、収益が安定的な原子力発電事業とを、あたかも互いに交わる点のない2本の複線のように伸ばす「複合経営」こそが西田厚聰・東芝社長の方針であるためだ。つまり、東芝は従来の「総合電機」から、06年の米国ウェスチングハウスエレクトリック社の買収で一気に業容拡大を果たしつつある原子力発電事業と、二工場同時建設のNAND型フラッシュメモリとの二事業を中核とする「複合電機」への移行真っ最中なのだ。だからこそ、今後とも価格下落をこうむりながらも積極投資路線を継続することとなろう。
【石井 洋平記者】
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