金融市場はこれから不安定化する危険がある マーケットは「FRBの役割」を忘れていないか
トランプ氏は米国の大統領選挙期間中から世界を震撼させてきた。だが、市場参加者にとって想定外だったのは、選挙後、金融市場に流れ込んだ「トランプ旋風」が「強烈に暖かい南風」だったことだ。
NYの株式市場はトランプ氏が次期大統領に決定すると、連日のように史上最高値を更新。日経平均株価も、12月1日終値で年初来高値を更新した。市場参加者からは、トランプ氏の経済政策への期待がますます強まってきている。彼の政策評価に対する豹変ぶりは、トランプ候補勝利を受け「トランプ当選で米国株は上昇の可能性もある」(11月9日付東洋経済オンライン)と指摘した筆者の予想を上回るものだった。
なぜ市場はトランプ次期大統領に「寛容」なのか?
だが、その実行性に否定的な見方も依然として根強く残っている。選挙期間中、トランプ氏が訴えてきた政策の中には、確かに実行性や効果に疑問符がつくものが含まれていることも事実だからだ。
そのことと、市場が大きな下落に見舞われるということは必ずしもイコールではない。実行性や効果が確認できるまでにはかなりの時間が必要だからだ。仮にトランプ氏が、選挙期間中に主張して来た政策を自ら取り下げていくならば、金融市場は大きな失望に襲われることになる。しかし、政策を推し進めようとする姿勢を見せ続けるのなら、しばらくの間金融市場は「期待」を胸に、実行と成果を待つことを選択するだろう。
重要なことは、トランプ氏が訴えている政策は、これまでの米国や先進国の政策の延長線上にないことだ。これまでG7等では「世界経済の持続的成長のためには過度に金融に依存する政策から、財政を加えた政策への転換が必要である」と、幾度となく指摘されてきた。しかし財政的な制約もあり、こうした政策転換は、ほとんどなされて来なかった。トランプ氏が主張している政策は、こうした手を付けられずに放置されてきたものだといえる。
もし、提唱する政策がこれまでの延長線上にあるものだったのなら、市場はその実行性と成果を求めるだろう。しかし、これまでの延長線上にない政策に対する期待がある間、市場は寛容になるものだ。
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