ひ弱さ、温室育ち、世間知らずが致命的な欠点に

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ひ弱さ、温室育ち、世間知らずが致命的な欠点に

塩田潮

 現在、全国会議員の4分の1が世襲政治家で、とくに自民党は約4割に上っている。政界の人材劣化の大きな要因とよくいわれる。世襲政治家の側には言い分や反論があるだろう。民主主義国で選挙によって選出されるのだから、一方的な世襲批判は民主主義の否定につながるという意見も有力だ。
 だが、反対に世襲の蔓延は機会の平等という民主主義の原理に反する傾向で、民主主義の死を招くという見方も根強い。
 世襲の横行と人材の劣化の関係を考える場合、二つの側面がある。衆参722人と数が決まっている椅子の相当部分を世襲が占拠していることの弊害、もう一つはそれによって非世襲の政治進出が阻害されていることの問題点だ。そこで必ず突き当たるのが、政治を担う人材とは、政治家が具有すべき資質や能力とは、というテーマである。それが備わっていれば世襲でもいいのではないかと言う人もいるが、適格条件の中身が問われる。

 政治家には、健全な政治的野心と闘争心と強い意志、政治的な力量や手腕、洞察力と先見性、判断力と決断力、政策やビジョンの構想力やアピール力、加えて倫理感覚や正義感や責任感、公平さと博愛精神、世界や国家や社会に尽くすという公人としての高い志、無私の心、国民の要求や不満を的確に汲み上げる感受性などが必要だ。
 世襲の場合、若い頃から政治を間近に見ながら、「門前の小僧なんとやら」で、自然に備わった政治的素養もある。確かにそこは大きい。だが、欠落部分の大きさと致命的弱点がいつも問題になる。ひ弱さ、温室育ち、世間知らず、人間の営みへの理解不足といった点だ。人材の劣化と関係するのはこの部分だろう。より大きな問題点は、なぜ世襲が横行するのか、それを許している政治構造である。その問題は次回に。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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