トヨタ「C-HR」のデザインは何が魅力的なのか 大胆でも煩雑に見えないスタイリングの秘密

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しかもそれぞれの線に意味がある。前後バンパーに採用した台形のモチーフは共通しているし、フロントのそれはヘッドランプからの連続性も考慮している。ヘッドランプ上下の線は平行にそろえ、後方はフェンダーと一体化している。真横から見たときのフロントウインドーとリアフェンダー、リアウインドーとコンビランプの傾きも近い。

こういう線を適当に引くか、考えて引くかで、デザインは大きく違ってくることを、筆者は何度も目にしてきた。欧州プレミアムブランドのデザイナーは、細部の造形に何度も修正を掛けてリファインしていくことが大切と語っていた。その言葉がC-HRにも当てはまるのではないかと感じた。

リアドアを開けるためのオープナーをピラーに内蔵したのはキャビンをクーペっぽく見せるための技で、ライバルになる日産のジュークやホンダのヴェゼルも採用している。ただしC-HRはライバル車と違い、オープナーを横向きとしている。最初は不思議な印象を抱いたが、実際に手を掛けると開け閉めしやすいレイアウトであることが確認できた。

ボディカラー

ボディカラーは新規開発色として、メタルストリームメタリックと呼ばれるシルバーとともに、ラディアントグリーンメタリックを入れた。シルバーはボディラインを際立たせるために多用される色なので納得だったが、グリーンは意外な選択に思えたので、伊澤氏に聞いた。

「独自性を追求したクルマらしい新鮮な提案をしたかったことに加え、コンパクトクロスオーバーらしい、華やかで元気な色が欲しいと思いました。ファッションやインテリアのトレンドを見据えたうえで、時代性を反映させた光を放つようなエメラルドグリーンを開発しました」

ダイヤモンドのモチーフで統一感を演出

インパネ

インテリアは3種類の素材を重ね合わせることで広がり感を表現しつつ、メーターやモニターディスプレイ、エアコンスイッチなどをドライバー側に向けることで一体感をも醸し出している。写真で見るとディスプレイが屹立しているように見えるが、運転席から見たかぎり違和感はなかった。

素材と色は、S/S-Tがブラックファブリック、 G/G-Tはブラウンのレザーとファブリックのコンビとなる。欧州向けに用意されている、ブルーのアクセントラインが鮮烈なブラックインテリアは、日本市場の特性を考えた結果、導入が見送られたようだ。

シート

インテリアでもうひとつ特徴的なのは、ステアリングスイッチ、エアコンスイッチ、マップランプ、ルーフライニング、ドアトリムなど、各所にダイヤモンドのモチーフを取り入れていることだ。統一感を演出すると同時に大人の遊び心を表現したとのこと。同様のモチーフは欧州車では見られるが、トヨタでの投入は珍しい。

大胆なフォルムの内側には、小さなこだわりがあちこちに隠されている。そんな部分も含めて、発売前から多くの人の気持ちをつかんでいるのかもしれない。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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