【遠藤功氏・講演】遠藤功のプレミアム戦略(その4) 飢餓と枯渇を醸成していくことがエモーションを刺激する

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『ToyokeizaiLIVE』シリーズ RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:遠藤功(早稲田大学大学院商学研究科教授、(株)ローランド・ベルガー会長)
2008年1月29日 六本木アカデミーヒルズ

その3より続き)
・たくさん売ろうとしない
・カスタマーではなくファンを作ること
・マーケティングではなくストーリーを語る
 これまで話した上記の発想を転換し、実際にどういう戦略を打ち出していくのか。『プレミアム戦略』では、8つの原則というものを打ち出しました。
 まず1つ目は、作り手の主観です。プレミアムというのは「作りたい人が作りたいものを作る」ということです。その代わり、それは究極のものでなくてはいけない。それがフラッグシップになるわけです。

 2つ目に、プレミアムは常に進化を求められます。日本の中にも伝統的なプレミアムの会社があります。とらやなど典型的ですよね。1本5000円のとらやの羊かんって知っていますか? そのとらやもどんどん進化を続けています。とらやの今の当主は言っています。「伝統とは革新の連続だ」と。

●需要より1台少なく作る

 3つ目に、派手な広告宣伝をしないこと。時計の頂点であるパテックフィリップの広告を見て、僕はすごく感動しました。肝心の時計はほとんど見えず、父親と息子が勉強しているような様子で頭を抱えているのですが、日本の会社はこういう広告宣伝できないよな、と。一見、何の商品の広告だか分からないのですが、コンセプトに「時計は父から子に受け継ぐもの」ということが掲げられていて、これを見たお父さんは「じゃあ、おれも息子に譲るような時計を買うかな」と。それが動機になるわけです。自分が欲しいのではなくて、息子に受け継がれるような時計を買いたい。これ、エモーション以外の何物でもないですよ。

 4つ目。これも非常に重要な原則ですが、やっぱり飢餓感、枯渇感を醸成すること。プレミアムに共通するのは、必ず売り切れ伝説、品切れ伝説です。買えないかもしれない。手に入らないかもしれない。これもまたエモーションを刺激します。フェラーリは、すごいことを言っていますよね。「需要より1台少なく作れ」と。本質ですよ。需要と供給ですべては決まっていくわけです。供給が多過ぎたらプレミアム感が全く無くなります。でも需要よりも供給が少な過ぎたら、ビジネスとして成り立ちません。どうするか。需要よりも1台少なく作りなさいというのがフェラーリの教えなのです。

 このように、いろいろなところでエモーションにつながっていくわけです。広告を見たときのエモーション。手にしたときのエモーション。そんなエモーションの連続がワクワク、ドキドキだと。それがやがてはそれぞれのプライスというものを正当化するわけです。連続的にそういうものを作っていかなければいけない。日本の会社は、これいい商品なんだから、分かっているやつは買えとなってしまうと、残念ながらそれで終わってしまうのです。

 そして5つ目。安易な拡張は行わない。これも日本の会社が不得意なところですよね。どうしてもちょっと売れると、すぐディフュージョン・ブランドを作るわけですね。ディフュージョンというのは普及版っていうことですね。でももともとのディフュージョンの意味は、「拡散」とか「散漫」ということですから、それはプレミアムにとっては一番の敵です。ですから安易にディフュージョンを作ることは、非常にリスクが高い。プレミアムの最大の敵は大衆化です。

 6番目は、販路を絞り込むこと。久し振りのデートで「今日はクリスマスだから、エルメスでも買いに行こうか」というときに、コンビニの隣にありましたと。皆さん喜びますか? 喜びませんよね。わざわざ足を伸ばして買いにいくプロセスが楽しいわけです。それはなぜかというと、非日常的なものを求めているから。ここでしか買えないという限定感が、エモーションにつながっていくわけですね。非日常的な空間を演出するためには、敷居を高くしておくことも重要。これも普通なら敷居は低くしろというところですが、プレミアムな店頭にみんながずけずけ入っていったら大変ですよね。
その5に続く、全5回)

遠藤功(えんどう・いさお)
早稲田大学大学院商学研究科教授、株式会社ローランド・ベルガー会長
早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機株式会社、米系戦略コンサルティング会社を経て、現在に至る。
著書に『現場力を鍛える』『見える化』『ねばちっこい経営』(東洋経済新報社)などがある。
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