【遠藤功氏・講演】遠藤功のプレミアム戦略(その3)

マーケティングではなく、ファンにストーリーを語らせる

『ToyokeizaiLIVE』シリーズ RoppongiBIZ*東洋経済提携セミナー
講師:遠藤功(早稲田大学大学院商学研究科教授、(株)ローランド・ベルガー会長)
2008年1月29日 六本木アカデミーヒルズ

その2より続き)
 3年前からトヨタ自動車が国内でレクサスを始めましたが、当初はうまくいきませんでした。浮上してきたのは去年です。なぜ、立ち上げ時はうまくいかなかったのか。ここに、日本の会社がプレミアムを考える際のヒントがあるのです。
 レクサスが日本での立ち上げに失敗したのには、幾つかの理由があります。まず、立ち上げたときにレクサスの「顔」となる商品が無かったこと。車好きの人だったら分かるかもしれませんが、レクサスにはLSというアメリカで大ヒットした高性能のモデルがあります。

 そもそも、アメリカで成功したのは、このLSという商品があったからです。それを日本版として新しいエンジンで開発することになりました。残念ながらその開発が遅れ、投入が1年遅れたのです。それでもトヨタはレクサスの国内での発売に踏み切りました。投入したのは3車種、GSとISとSCです。
 それぞれのモデルはけっして悪い車ではありません。でも、残念ながらそれはレクサスを代表するようなフラッグシップとは認知されなかったわけですね。ですから、マーケットでは、「GSはアリストだよね」「ISってアルテッツァだよね」「SCはソアラだよね」という話になってしまうわけです。そんなものをなぜ100万円も高く買わなきゃいけないんだと。そういった意味で、やっぱりプレミアムの顔としてのフラッグシップは不可欠なのです。そのブランドを象徴するような商品が無いということは、もう致命的なのです。

 では、「フラッグシップ」とは何を意味するのでしょう。例えばメルセデス・ベンツの価格帯を見ていただきたいと思います。Sクラスは、ベンツのフラッグシップです。一番安いモデルで996万円、一番高いモデルだと2000万です。ここにベンツの技術がすべて集約されています。
 でもSクラスを買える人はごく一部です。やっぱり大き過ぎて駐車するのも不便だし、別にSじゃなくていいわという人は、Eクラスに乗ればいい。それでもEクラスは640万円から1000万円です。さらにお手ごろなのが、450~650万円のCクラス。これは「プレミアム・マス」といって、プレミアムの中では一番売れるボリューム・ゾーンです。その下に299万円から402万円のBクラス。252~353万円のAクラスがあります。

 この商品構成は、どこから来ているか。すべては最上級のSクラスが基点です。Sというフラッグシップ……象徴があって、その値付けがあって、それ以外をどう位置付けていくか。どう機能的に差を付けていくのか。価格差を付けていくのか。すべては上から決まってくるわけです。つまり、プレミアムで一番肝心なのは実は値付けなんですよ。価格政策というのが一番ハードルの高いもの。まず幾らで売るんだということを決めて、それに見合う商品を徹底的に作ることなのです。

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