スティグリッツ氏警告「トランプは危険人物」 「米国経済がトラブルに陥るリスクは高い」

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彼は環太平洋経済連携協定(TPP)の批准も拒みそうだが、これは米経済に何の影響も与えない。

北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉も公約しているが無理な話だ。メキシコとの国境に壁を造ると言っているのに、メキシコが再交渉に応じるわけがない。トランプは、メキシコと同国民を大いに侮辱してきたのだから。

メキシコのペニャニエト大統領が8月末にトランプと面会した後、ペニャニエト大統領の支持率が急落した。メキシコ政府にとって、再交渉に応じることは自殺行為だ。

トランプは中国と貿易戦争を起こすかもしれない。実に愚かなことだ。そんなことにでもなれば、米経済、世界経済に甚大な被害が及ぶ。

──教授はグローバル化の弊害も指摘されています。自由貿易協定で、米製造業の雇用が減少したそうですね。

米国人の下位90%は、収入が伸び悩んでいる。その点から見ると、米経済は悲惨な状況にある。トランプは、有権者の経済に対する不満を利用した。もっとも、その問題を解決するには最悪の人物だ。彼は格差を拡大する。富裕層に必要なのは減税でなく、累進課税の強化だ。

貿易協定が経済に打撃を与えた理由の一つは、政府が失業者の転職を支援してこなかったことにある。共和党がノーと言い続けてきた。皮肉にも国民を苦境にさらしてきたのは共和党なのだ。今回共和党が勝利したことを、多くの人々が奇妙に感じている。

金融規制の撤廃はナンセンス

──金融規制改革法(ドッド・フランク法)の撤廃も公約しています。

撤廃は望ましいことではないし、実現もできないだろう。上院でのフィリバスター(議事妨害)を打ち切るためには議員の5分の3に当たる60票が必要だが、共和党議員は51人しかいない。廃案に持ち込むのは事実上難しい。

特定の内容の見直しならともかく、全廃などできるはずもない。金融危機を招いた無謀な貸し付け・金融取引を再開するとでもいうのか。信じがたい主張だ。

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