英国路面電車の「脱線事故」はなぜ起きたのか

低速トラムに潜む危険性

クロイドンを走るトラム。郊外は旧国鉄廃線区間を高速で走る(筆者撮影)

11月9日午前6時10分頃(日本時間午後3時10分頃)、英国ロンドン南部クロイドンでトラム(路面電車)が横転、英国時間午後10時時点で7名が死亡、50人以上が負傷する大事故となった。列車は、始発のニューアディントン駅を事故の約20分前に発車、ウィンブルドンへ向けて走行中、事故現場となったサンディランズ停留所手前の急カーブ区間で脱線、横転した。

警察は、生存していた42歳の運転士を逮捕し拘留、現在事故原因を調査中だが、通常は減速するカーブ手前で減速しなかった、という乗客の証言があり、原因究明に向け慎重に捜査が進められている。

事故発生現場は「難所」

非常に個人的なことで恐縮だが、筆者は事故現場となった停留所が自宅最寄り駅で、事故現場から500mも離れていない場所に住んでおり、普段からこの区間をよく利用している。この日の朝も事故の約30分前にトラムへ乗車した。

クロイドンのトラムは、ロンドン南部のウィンブルドンからクロイドン市街地を通って、ベッケナムジャンクションやニューアディントンなどとの間を結ぶ、総延長約28キロメートルの路線網だ。郊外区間の一部で旧国鉄廃線跡を活用する一方、クロイドン市内は道路に軌道区間を新設し、2000年に開業した。市内中心部へのアクセスを飛躍的に高め、東西2つに分かれていたクロイドンを一体化、4系統の路線で年間2700万人の利用客数がある。

今回の事故は、クロイドン最大のターミナル駅イーストクロイドンから2つ目、サンディランズ停留所に近い、2つの路線の分岐点付近で発生した。事故を起こした列車は、始発駅のニューアディントン駅を事故の約20分前に発車、6時10分頃サンディランズ停留所手前のカーブ区間へ差し掛かり、横転した。

事故原因は、警察からのレポートがないため、現時点では推測の域を出ないが、分かっている点がある。それは、現場が最高速度から一気に低速度へ減速しなければならない、難しい区間の1つということだ。

事故現場の手前は、このトラム路線で最も速度が出る区間となっており、最高速度は時速80キロメートルに達する。現場の1つ手前のロイドパーク停留所付近で、西へ向かっていた線路はいったん進路を北へ向け、そこから一直線に進む。この区間は旧国鉄廃線跡で、約1.2キロメートルの長い直線が続く。途中には2つのトンネルもあり、丘陵地帯を真っすぐ抜けていく。

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