JFE、3000億円ハイブリッド債の「功罪」 やはり買収防衛の一環?資本コストの秩序混乱に懸念も
当初転換価格は発行発表前日(2月27日)終値4740円の約8割増しにあたる8570円。新日鉄は約5割増しの740円だったが、発行後株価が上昇し、900円を超えてしまった時期もある。が、現在は500円前後に戻っている。
転換価格の修正条項はついておらず、潜在株式についての調整が入るだけで、しかも潜在株式割合は現時点で発行済み株式数のわずか0・4%。したがって、この転換価格が今後大きく変動することはなく、現在の株価から8割も株価が上昇しなければ、転換請求は発生しない。
ただ、現在と比べれば約8割増しでも、昨年10月にはJFEの株価はこの水準だったので、転換抑制に十分な水準なのかどうかは現時点では何ともいえない。
そして、本件における転換抑制策の目玉が、『現金決済条項』である。
『現金決済条項』とは、償還前4カ月間は、CBをその時点の“財産価値”で強制的に、引き受け3行から現金で買い取ることのできる条項である。
転換価格が8530円のままだと仮定すると、3000億円の社債で引き受け3行が転換請求できる株数は約3516万株だが、株価がたとえば1万円になっていれば、この新株引受権付き社債の価値は、1万円×3516万株=約3517億円ということになる。
この条項は、3517億円のうち、社債額面相当部分の3000億円は現金で、残り517億円分は株券で渡すことで、強制的にCBをJFEが取得できる、というもの。したがって、JFEにその意思と必要な現金さえあれば、3516万株よりもはるかに少ない株数の増加で済んでしまう。
JFEは3000億円のうち1700億円を設備投資に使い、1200億円を自己株取得に使う。取得予定株数はCB発行によって増える約3500万株分を想定してはいるが、現在の株価水準では、1200億円の予算で3500万株は取得できない。
したがって、「株価水準次第だが、現在程度の株価水準であれば1200億円で買える株数」(JFE)が現実的なところだろう。
このCB発行と自己株取得で、資本コストは現在の4・24%から3・97%に下がる。「機動的な戦略投融資に必要な資金の調達」と、「資本構成の再構築による資本効率の向上」を目的としている、というのがJFEの主張である。