「東武の新型特急」はロマンスカーに勝てるか 日光・鬼怒川観光活性化へ、ブランド力がカギ

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ここ最近、関東の大手私鉄では観光特急や座席指定列車など、車両そのものがセールスポイントとなる列車の計画が相次いでいる。「リバティ」の愛称が発表される一週間前には、小田急電鉄が2018年春から運行する新型特急ロマンスカーの概要を発表した。

小田急ロマンスカーといえば、東武の特急と並んで関東地方の私鉄を代表する特急列車だ。小田急の新型特急は座席数を増やして通勤利用も意識しつつ、先頭に展望席を設けるなど、乗ってみたいと思わせる「観光特急」としての特徴を前面に打ち出した。

東武が2017年夏から鬼怒川線で運行する予定のSL。9月に「火入れ式」が行われた(撮影:尾形文繁)

いっぽう、東武の「リバティ」は機能性を重視した特急だ。奥山清行氏監修のデザインという要素はあるものの、開発コンセプト自体が「さまざまな目的に応えること」であり、利便性の高さに重きを置いた車両といえる。日光・鬼怒川の観光に力を入れるという東武グループ全体の流れに沿った車両ではあるものの、同エリアの魅力は高級ホテルやSL運転など、観光地としての地域の底上げを図ることで高めていき、新型特急はそのエリアへのアクセスを向上させるための乗り物というイメージだ。

東武特急のブランドは定着するか

車両のクオリティでは利用者から評価の高い東武の特急だが、ブランド力では「ロマンスカー」に一歩及ばない感は否めない。かつては東武の特急もロマンスカーと呼ばれていたが、今では完全に「ロマンスカーといえば小田急」のイメージが定着し、同社の登録商標ともなっている。

小田急が先日行った新型車導入と既存車両「EXE(エクセ)」のリニューアル発表会見では、デザインを手がける岡部憲明氏から「ロマンスカーの伝統」や「ロマンスカーファミリーとしてのイメージ」といった言葉が何度も聞かれ、ブランドイメージを強く意識していることがうかがえた。箱根と日光・鬼怒川はともに東京近郊の観光地として古くから親しまれてきた地域だが、箱根の人気には時間をかけて築き上げたロマンスカーのブランドが一役買っていることは事実だろう。

東武が力を入れる日光・鬼怒川の観光活性化に、新特急「リバティ」はどのような付加価値をもたらすだろうか。「観光輸送に対しては、長年お客様のニーズに応えてきた歴史がある。東武は東武なりにお客様のニーズにマッチした特急をつくっていきたい」と都筑氏は語る。新型特急が走り出す2017年は、5月に東京スカイツリーが開業5周年を迎え、夏には鬼怒川線でのSL運転開始と、観光面で目玉となるイベントが続く年だ。既存の「スペーシア」などと合わせ、「リバティ」が東武特急の新たなブランドとして浸透するかどうかが注目される。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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