「豊島区再生」に挑む日本一有名な大家の手腕 消滅可能性都市から脱せるか

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その後、豊島区は2014年11月に「まちのトレジャーハンティング」を開催。これは地元の人と、外からやってきたトレジャーハンターが一緒に街を歩き、お宝を発掘するというイベントで、お宝には空き地や空き家といった空間資源のほか、地域の名人のような人的資源や、文化資源、歴史資源なども含まれる。外から来る人の視点を取り入れながら、地元の人たちにも街の潜在的な価値に気づいてもらおうというのが趣旨だった。

まちのトレジャーハンティングの一幕。参加した子どもたちが大人たちの発表を楽しそうに笑いながら聞いていたのが印象的だったと青木氏

このイベントには、としま会議の参加者も多く参加。宝探しに参加した人は100人以上に上り、結果を聞きに来た人やスタッフなどを含めるとイベント規模は約200人と、大いに盛り上がった。青木氏と組んでから5カ月で、ここまでこぎつけたというのは行政が絡むイベントとしては異例のスピードである。

そこから5カ月後の2015年3月には、東京初のリノベーションスクールも開かれた。。大正大学で行われた最終プレゼンには300人以上が集まり、会場は人で埋め尽くされた。最後は参会者全員で花道を作り、参加した高野之夫区長を「区長コール」で見送ったという。

豊島区で再生イベントが盛り上がるワケ

こうした盛り上がりの背景には、街の課題と、青木氏が考えていた問題に共通点があったからだ。前述の通り、としま会議の中心となっているのは30代の子育て世代で、子どもにとって「故郷」となる豊島区を住みやすい魅力的な街にしたいという思いが強い。一方、豊島区は消滅可能性都市に選ばれてから、サステイナブルな街づくりに対する関心を高めていた。こうしたさまざまな問題意識が、さまざまなイベントへの関心に結び付いたと青木氏は分析している。

だが、物事はそうそう上手くいくものではない。リノベーションスクールは現在、3回目が計画されているものの、昨年9月に開催された2回目の結果が芳しくなく、計画中の案件が1件あるのみ。再活用に消極的な不動産所有者を説得できていないのが理由だ。

豊島区は空き家が多いとはいえ、23区内という恵まれた立地にあり、不動産所有者にはさまざまな選択肢がある。リノベーションは新しいビジネスや雇用の創出も意図するため、カフェやシェアオフィスなど住宅以外の用途になることが多いが、相続税対策として活用を考える場合には、そうした手間は嫌がられる。そのため、所有者はアパートなど儲かりそうな物件への転換を図ることがほとんどだ。

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