「豊島区再生」に挑む日本一有名な大家の手腕 消滅可能性都市から脱せるか

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
各回50~60人集まるとしま会議。ほとんどは地元に関係のある人たちだ

それから、2016年10月までに19回開催され、100人近くがスピーカーとして登壇。なんと1000人以上が聴衆として参加している。マンションに訪れる人が格段に増えたこともあって、コワーキングスペースの稼働率も上がったという。

ここで注目すべきは、スピーカー、参加者ともに地元に縁がある人がほとんどだったという点だ。共通点があることで仲良くなるのも早く、としま会議を通じて区内の30代子育て世代を中心としたコミュニティが生まれたのである。

としま会議の立ち上げたのと同じ頃、青木氏は豊島区ともつながりを持ち始めていた。きっかけは、区に東京初となる「リノベーションスクール」開催を働きかけるためのプレゼンテーションだった。

2011年に北九州で誕生したリノベーションスクールは、不動産の再生を通じて新しいビジネスを生み、地域を再生しようという事業。同地では2017年10月までに19件の物件がカフェやシェアオフィスなどに再生され、400人以上の新規雇用が創出される見込みだ。地域内の使われてない不動産の活用方法を参加者たちが考案し、所有者や地域に向けて提案するというもので、実現には地域や不動産所有者の協力が不可欠だ。

豊島区の職員たちが驚いたこと

カスタマイズ賃貸の場合、自分たちの好みを反映した部屋に住むことができる。カラフルで楽しそうな、これまでにない住戸が多く誕生している

そこで、リノベーションスクール開催を企画する会社にも参画する青木氏もプレゼンをすることになったわけだが、そこで豊島区の職員たちが関心を持ったのは、ロイヤルアネックスの出生率の高さだった。

「入居後、子どもが誕生したというケースが多く、2014年には1年間で10人ほど生まれた。愛着の持てる住まい、ご近所との和やかな関係など、住環境が良くなると子どもが生まれやすくなるのです」と青木氏は話す。ちょうど豊島区が消滅可能性都市に挙げられた直後で、区には子育て世代が住みやすい街づくりが必要だとの危機感が高まっていた。

「それ以前に、豊島区の空き家率は都内ワーストの15.8%(2013年)と高く、この『空き家』と『子育て』という2つの課題解決にリノベーションが有効ではないかと考えられたのです。その後、まちづくりの新しいビジョンを策定し、民間主導による公民連携型でリノベーションスクールなどの事業を実施していくことになりました」(青木氏)。

次ページ青木氏と豊島区がやったこととは
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事