パナソニックが背負う 赤字解消の二つの課題 中計達成のカギは「転地」と「脱・自前」

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供給先と購入元を転換

AIS社は、中計で止血が必要な赤字事業と名指しされた5事業のうち、ドライブ・ピックアップなどの光、回路基板、半導体の3事業を抱える。それに小型二次電池を加えた4事業で780億円の収益改善をブチ上げた。

国内拠点の再編など固定費削減や合理化と並び、切り札と位置づけるのが「転地」。これはパナソニックの社内用語で「供給先の転換」を意味する。「小型二次電池、光事業ともに、これまではノートブックが主戦場だった。しかし市場がシュリンクし、材料費のコストダウンについていけなかった」とAIS社社長の山田喜彦専務は振り返る。

同様に、半導体も赤字の根因をたどると、テレビ、ブルーレイディスクなどの価格下落に行き着くという。価格競争が激しいデジタル・AV機器から供給先転換を目指す。「半導体は今後、AV系には力を入れない。入れるのは自動車だ。小型二次電池は電動工具や電動アシスト自転車、家庭向けや基地局の蓄電池システムに振り向ける」(山田専務)。

AVC社でも、液晶パネルを従来のテレビ向けから非テレビへ、携帯電話では個人向けから法人向けへなどの「転地」を主要課題に挙げる。

もう一つ、各カンパニーが強調したのが「脱・自前主義」だ。転地が供給先の転換であるのに対し、脱・自前は購入元の転換を指す。「何でも自前でというのが、こびりついていた」(経営幹部)。巨費を投じたプラズマパネルが典型で、コスト高の自前部材にこだわり、最終製品の競争力を失ったという反省がある。脱・自前を進めると、自社向けに製造してきた部材は自立を求められる。「外販は要求が厳しく、開発スピードを速める必要も生じる」(同)。

ただ、脱・自前は大坪文雄前社長時代から課題として掲げられたもの。必要性は認識していても実行が遅れてきた。「脱・自前は短期的には収支改善のトリガーとなるが、相手に手の内を明かさねばならず、そんなに甘くない。肝心なのは何を外部から調達するかの見極め」(同社社員)と難しさを指摘する声もある。

実行が課題なのは転地も同様。液晶パネルの転地では、非テレビ向けを12年度の約2割から13年度に8割へ引き上げる計画。非テレビで有力供給先のタブレットについて、「顧客の需要が伸びていない。どう考えても、計画が達成できる確信を持てない」などアナリストからは実現を疑問視する声が上がった。

カンパニーの経営戦略は、細かい数字を示した具体的な戦略といえるが、それと実現可能性は別問題。近年、計画の見直しを繰り返したパナソニック。雑音をなくすには、結果を出すしかない。

(撮影:ヒラオカスタジオ)

(週刊東洋経済2013年6月15日号)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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