ジャバラ型浣腸「ひとおし」は何がスゴイのか ギリギリの宣伝戦略で若年層にアピール

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苦心して作った商品でも、お客様に知られなければ存在しないのと同じ。でも会社の規模から、広告費に大きなおカネをかけられません。「ならば、低予算で記憶に残る広告を出そう」という戦略で、効果的な宣伝を心掛けました。

ウンチを扱うきわどい広告でも、「ひとおし君」のゆるいキャラクターが中和してくれます。商品の良さと宣伝効果が相まって、圧倒的な差があった業界最大手の会社と販売本数で肩を並べるまでになりました。

便秘時のセカンドチョイスへ

国内の浣腸メーカーで作る「浣腸工業会」の調査では、浣腸の生産本数はここ数年9000万本台で推移しています。しかし、若者の認知度が低くて先細りのおそれがあり、それが業界としても大きな課題となっています。

「浣腸は、ほかの便秘対策と比べても多くの優れた点があります。でも、お尻から注入することに抵抗感があり、便秘時の対策としてはラストチョイスになっています」と、西岡社長は言います。

浣腸は、第2類医薬品ですが、ほかの薬と大きな違いがあります。一般に薬は吸収されて効くのですが、浣腸の主成分グリセリンは、反対に腸壁から水分を吸収して腸の収斂を促し排便を促進します。薬が体に吸収されないので副作用の心配がほとんどありません(腸壁に傷があれば別ですが)。ムネ製薬の場合、グリセリンには植物性ヤシの実を使っており、さらに体に優しいものとなっています。

また、浣腸は即効性が特長で、注入後すぐに便意を催します。箱には「薬液注入後、2~5分我慢して、十分便意が強まってから排便してください」と注記されていますが、そのくらい効き目がすぐに表れます。これがいいのです。普通の飲み薬は、飲んでから便意が催すまでに時間差があり、いつしたくなるかがわかりません。それで勤務中やお使いの最中など、困ったことになります。だから、皆さん、休日前に服用することが多いと言います。浣腸はすぐに結果が出ますので、その心配がありません。

小さいお子さんをお持ちのお母さん方は、乳幼児に浣腸をするのは抵抗があると言います。しかし、小児学会では、赤ちゃんに排便の喜びを教えるという意味で、浣腸も有効な手段と言っています。

もちろんお薬ですから、医師と相談することが必要な場合もあります。常用すると慣れが生じて効果が薄れるので、これも避けねばなりません。でも正しく使えば、現代人にとって実に効果的な便秘対策なのです。

ムネ製薬ではこの秋から、便秘で悩む女性向けに「浣腸に関するQ&A」など、特設サイトも公開しました。商品開発の苦労話なども盛り込み、若者向けの内容になっています。「ファーストチョイスはおこがましいですが、運動、食事療法といった生活習慣病対策をされた後、それに続くセカンドチョイスになれば、と思っています」(西岡社長)。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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