三菱自動車、優先株大量発行のツケ--完全復活に待ち受ける資本政策の高いハードル

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第2の千代田化工?深まる三菱商事との関係

三菱商事出身の益子修社長は「銀行については出資に規制もあるが、株主、パートナーとしてこれまで助けてもらったこともあり、別に株を手放せとこっちからお願いする理由はない」と資本関係の現状維持、普通株転換の容認をにおわせる。

三菱御三家のうち、すでに4・89%を保有する三菱東京UFJ銀行は銀行法の規制上、5%以上の出資には応じられない。DES(債務株式化)を用いて取得した優先株も多く、「銀行実施のDESはもともと借金という意識があり、できるだけ早期に処理してほしいと思うのが自然。債権者と株主の役割を担っている現状は利益相反の可能性もある」(公認会計士)という指摘もある。

また、筆頭株主であり、三菱自動車を持ち分法対象にすることで一種の信用補完を行っている三菱重工はシナジーを出しあぐねているようだ。現在進めている次世代ディーゼルエンジンの共同開発について、三菱重工側は実験設備提供というあくまで補佐的な役割にとどまっており、普通株転換によって資本提携を拡大する正当性は薄い。

その点、事業面のシナジーを期待でき、資本面での提携余地が大きいのが三菱商事だ。いまや現地の市場調査や販売代理店開拓など、海外販売面では不可欠の存在だ。人事面でも、重工の西岡喬会長による会長兼任は残るが、どちらかというと距離を置きつつある重工に対し、益子社長以下、商事は人的にもバックアップ体制を強化しつつある。4月には三菱商事の中国副総代表を務めた小西正秀氏を海外営業統括の新任執行役員として迎え入れた。

三菱自動車との将来の関係を暗示させるようなニュースも相次ぐ。三菱商事は3月、千代田化工建設に608億円の出資を行い、10・27%の出資比率を33・4%に引き上げ、持ち分法適用会社にした。三菱自動車が「第2の千代田化工」になる可能性も決して否定できない。

(西澤佑介=金融ビジネス)

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