日本人が抱える「正しいキャリア」という幻想

経営学者、石倉洋子が読む「ライフ・シフト」

高校生や大学生と話すと「こうあるべき」「一度決めたら変えられない」という意識が強いことを感じますが、これは、「変身資産」という考え方がそもそも存在しないことをよく示していると思います。 

すべての世代が「自分自身の絶えざる再生」を

「レクリエーション(余暇)からリ・クリエーション(自己の再創造)へ」というメッセージは、リタイアしてこれからどうするか、と思っている団塊の世代にとっても具体的かつ元気の出るものだと思います。今までやりたかったけれどもできなかった「旅行をする」「コーラスをする」「楽器を習う」など、いわゆる「趣味」の活動をリタイア後に始める人は増えてきています。

しかし、「リ・クリエーションを」という本書のメッセージは、リタイアするまで待つのではなく、若い時から常に自分を新しく創造し、そしてそれを生活の一部にすることの重要性を説くものです。

本書から得られるメッセージは、日本の全世代に通用します。個人で選択することは子供の頃から経験を積まないと身につかないし、突然決めろといわれても困難です。選択のオプションは広いこと、さらに広がりつつあること、そして個人こそその選択の権利を持っていること、選択したことは自分で責任を持つことを人生100年時代は要求しています。

今の子供は寿命が100歳を超えることが当たり前ですから、若いときから個人で選択する経験を持たせる必要があります。また子供や若い人だけでなく、本書に登場する3人(ジャック=1945年生まれ、ジミー=1971年生まれ、ジェーン=1998年生まれ)のひとり、団塊の世代の「ジャック」の年代にある人も、意識して3つの目に見えない無形資産をつくっていくことが必要です。

私にとっての本書の最も大きなインパクトは、「長寿は、多様で素晴らしい経験をする時間の余裕をあたえてくれるすばらしい機会だ」という根拠のある(長寿は世界的に、とくに日本では「明らかな傾向」ですから)期待です。それを自分のものとできるかどうかは私自身にかかっていること、そして自分なりに残りの人生をデザインできるということは、開放感をもたらしてくれました。

団塊の世代の私がこれだけ楽観的な考えを持つことができるのです。もっと若い世代にはさらに時間の余裕があり、より広い世界が開かれ、選択オプションはもっと広くなります。そのような確信を持って自分の人生を生きることを、本書は後押ししてくれます。

最後に、今やっているセミナーシリーズなどで本書のアイデアをもとに試行している、誰にでも簡単にできる練習をご紹介します。それは「100歳の私—自分の人生を語る」というものです。学校の同窓会ででもプロジェクトの仲間とでもよいのですが、“100歳記念イベント”を想定して、100歳の自分がこれまでたどってきた人生をストーリーとして語る、という練習をしてはいかがでしょうか。100歳の自分がイメージできれば、そこに至る道もはっきりしてくると思いますし、今はやりの、ストーリーを語る練習にもなります。ビデオや音楽など新しいメディアを使ってストーリーを作るのも楽しいのではないでしょうか。

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